276 スライムさんと血みどろパン
「あさはぱん! ぱんぱぱん!」
スライムさんが、お店の横からひょっこり姿をあらわした。
「おはよう、スライムさん」
「あさは、ぱんです!」
スライムさんは私のうしろにまわりこむと、ぐいぐいと押してくる。
「積極的だね」
「おみせに、いれてしまえば、こっちのものです」
私はスライムさんに押されてお店に入った。
「おや?」
カウンターの上には白いお皿があって、その上にはパンがある。
丸っこいパンの中央に深く切れ込みが入っていて、そこには赤いものがたっぷりぬってあった。
近くで見ると、イチゴの果肉のかたまりや、種のつぶつぶがわかる。
「イチゴのジャムパン?」
「ちみどろぱんです」
スライムさんは言った。
「えっと……。イチゴのジャムパン?」
「ちみどろぱんです」
「うーん」
私は腕を組んで考えた。
「私とスライムさんの間に、異空間が発生しているのかもしれない」
「そうなんですか?」
「どうして血みどろなの?」
「えいむさん」
スライムさんは、にっこり笑った。
「これは、しょうばいですよ?」
「そうだね」
「だとしたら、ちみどろでしょう!」
「どうして!?」
スライムさんは、カウンターの上にとんだ。
パンの横へとやってくる。
「いいですか? これは、しょうばいですよ?」
「二度目だね」
「しょうばいというのは、あたりまえの、しょうひんめいでは、いけません! おきゃくさんの、いんしょうに、のこさなければならないからです!」
「!」
私はスライムさんの深い商売人精神に感動した。
「じゃむぱん。そんな、なまえで、いいんですか?」
「たしかに!」
「やくそう。そんな、なまえで、いいんですか!?」
「薬草は薬草でいいんじゃないの?」
「そうですね!」
スライムさんは納得した。
「でも、ジャムパンも、これでいいような気がするけど」
「そこを、あえて、ちみどろです!」
スライムさんは、ゆずらない。
「あかを、いかして、ちょうせんてきに!」
「でも、おいしそうかな」
「じゃあえいむさんは、ふんわりぱんに、とれたていちごをじゃむにしたあまずっぱーいじゃむぱん、がたべたいっていうんですか!」
スライムさんは、ぎらり、と私を見る。
「……」
「……」
私たちは見合った。
「食べたい!」
「!?」
「おいしそう!」
「!!」
スライムさんは、目を見開いた。
「……たしかに!!」
売れた。
採れたてイチゴをジャムにした、あまずっぱーいジャムパン、大好評発売中!
血みどろパンもあるよ!
お近くのよろず屋でおもとめください。




