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273 スライムさんと4年に1度

「わっ!」

「うわっ」

 急に青くて透き通ったものが飛び出てきて、私は尻もちをつきそうになった。

 よろず屋の近くの草原に、スライムさんがひそんでいたのだ。


「ふふ。こんにちは!」

「もう、こんにちは。どうしたの、こんなところで」

「えいむさんと、きょうそうをしようとおもって!」

「競争?」

「おみせまで、です! ようい、どん!」

 スライムさんが、草原のぴょこぴょこ走りだした。


 スライムさんが、草の上を泳ぐように進んでいく。

 私もちょっと遅れて走った。

 スライムさんも速かったけれど、一歩一歩は私のほうが大きい。

 風を感じながら、さっさっさっ、と草の感触を感じながら走った。


「やった!」

 私はよろず屋にたどりついた。

 すこし遅れて、スライムさんがぴょこぴょこ追いついた。


「やりますね!」

「へっへー」

「これでは、たいかいは、ひらけませんね……」

 スライムさんは、ちょっとつぶれた。


「大会?」

「はしるのが、はやいひとをきめるたいかいを、ひらこうかとおもったんです」

「出るんじゃなくて、開くの?」

「はい! しゅさい、です!」

「すごいね!」

「はい!」

 スライムさんは元通りの形にふくらんだ。


「てはじめに、えいむさんを、げきはしようとおもったんですが……。きょうてきでした」

「あまく見てもらっちゃ、困るね」

「おみそれしました!」

「ふふ」

 私は、右手を腰にあてて、ちょっとかっこつけてみた。


「まずは、えいむさんを、げきはするれんしゅうをしないと……」

「どうして速く走る大会を開きたいの?」

「もしかしたら、ぼくが、せかいいち、はやいかもしれないとおもいまして!」

「そっか。可能性はあるよね」

「でも、えいむさんにまけました!」

「私が世界一で、スライムさんが二位かもしれない」

「!」


 スライムさんは、ぷるん、とふるえた。


「そのかのうせいは、かんがえませんでした!」

 スライムさんは、ぴょん、ととんだ。


 でも、すぐちょっとつぶれる。

「……えいむさんより、はやいひともいますよね?」

「そうだね」

「じゃあ……。まだまだ……」


 ピン。


「……私はピンときました」

「なんでしょうか」

「いいかな? 他の人たちもいるから、スライムさんが負けるかもしれない。ということは? 私と、スライムさんだけの大会を開けば……?」

「! ぼくたちで、どくせんです!」

「そのとおりだよスライム君」

 私は軽くうなずいた。


「世界一決定戦、という名前だけど、私たちだけでやるんだ。そうすれば、世界一と、二位を」

「どくせんできます!」

「ふふ」

「これなら、もしかしたら、ぼくが、せかいいちになれるかも」

「まだ、可能性を捨ててないんだね?」

「はい!」

「私も負けないよ!」

「そうだ! ぼくも、おもいつきました!」


 スライムさんが、きりっ、とした。


「なに?」

「たいかいを、4ねんに、いっかいだけにします! すると……?」

「……? そうか、優勝が、貴重になる!」

「4ねんかんは、ゆうしょうしゃが、かわりません!」

「すごい!」

「こうしてられない! れんしゅうです!」

「私もね!」


 私たちは、よろず屋の前で、走る練習を始めた。

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