270 スライムさんとコソコソ
よろず屋の前にたどりつくと、パプー、と音がした。
私はお店の裏へと歩いていった。
なんとなく、土の上を選んで歩いた。こうすると特に足音がしない。
顔をそっと出すと、裏にはスライムさんがいた。
スライムさんの近くには、茶色い、袋のようなものがある。
布製、ではないように見える。革製かもしれない。
中がすこしふくらんでいる。
その上にスライムさんがゆっくり乗ると、パプー。
高い音がした。
スライムさんが横にどくと、またすこしふくらんだ。
また乗る。
パプー。
スライムさんが、くすくす笑っている。
会心の音だったのだろう。
私からしても、はっきりと、きれいに出たように思えた。
私はいったん顔をひっこめて、お店の中に入った。
中には、開けたばかりの箱があった。からっぽだ。
きっと裏でスライムさんが遊んでいる袋のようなものが入っていたのだ。
パプー。
また聞こえた。
お店の外に出て、まわりを見た。
草原の、青々とした葉を一枚ちぎった。
それを持ってお店の裏に近づく。
葉っぱに唇をあてて、吹いてみた。
パプー。
似た音がした。
スライムさんがこっちを振り向きかけたので、私は身を隠した。
土の上を歩いて、反対側にまわりこんだ。
逆側から見ると、スライムさんがおらず、袋のようなものが置いてある。
私はこっそり、袋のようなものを回収した。
スライムさんはどこにいるだろう。
スライムさんがよろず屋を一周すると推理した私は、スライムさんを追いかけるような向きで、よろず屋の外壁にそって歩いた。
歩いて、入り口までたどりついたけれど、スライムさんとは会わなかった。
スライムさんの声がした。
袋がなくなったのに気づいたのだろう。
私はこっそりよろず屋に入って、箱の中に袋を入れた。
それから、よろず屋の入り口に立った。
「あ、えいむさん!」
スライムさんが裏からやってきた。
「スライムさん、こんにちは」
「じつは、ふしぎなことがあったんです! ことの、ほったんは、これなんですが!」
スライムさんはお店に入って、箱の中を見た。
「おや?」
「どうしたの、スライムさん」
「あります! ますますふしぎです! ますます、ふしぎです!」
スライムさんがくるりとまわった。
「これは、だいじけんですよ……」
スライムさんがむずかしい顔をしたので、私は、ポケットに入れておいた葉っぱを出して、唇にあてた。
吹く。
パプー。
スライムさんが、ぱっ、と私を見た。
「えいむさん……」
「なに?」
「なんとなく、おもうのですけど……」
「なに?」
「はんにんは、このなかにいる!」
「スライムさんだね」
「ちがいます!」
「私にだまって、ひとりで遊んでいた罪だね」
「? うっ!?」
スライムさんは、ぐっ、とつまった。
「その様子から察するに、だまって先に遊んだらよくないかもしれないと思いつつ、遊んだね?」
「ううっ」
スライムさんは、すこしつぶれた。
「……許してあげよう」
「ありがとうございます!」
「私も、スライムさんだまし罪があるけど」
「やはり、えいむさんがなにか!?」
「ごめんね」
「ゆるします!」
「ありがとう。それで、あの袋はなに?」
「あれはですね……」
スライムさんが、袋のようなものの説明を始めた。




