267 スライムさんと木の塔
「えいむさん、あたらしい、しごと、しりたいですか?」
お店で話をしていたら、ふと、スライムさんが言った。
「え? よろず屋、やめるの?」
「ふっふっふ。やめませんよ!」
「じゃあ?」
「おまちください!」
スライムさんは奥にひっこんだ。
「これをみてください」
スライムさんが押してきた箱に入っていたのは、木の棒、だろうか。
20、いや30くらい? たくさん入っている。
ひとつ手に取る。長さは私の指くらいだけど、幅は指二本分くらいあって、きっちりと切りそろえられた直方体だ。
「これは、なにかの材料?」
「これがかんせいひんです」
「ふうん。なにに使うの?」
「とうを、たてます」
「塔」
「つんでもらえませんか?」
スライムさんが、目をキラキラさせて、ぱちぱちさせた。
「かわいい顔してる?」
「はい!」
「しょうがないなあ。やってあげよう」
「ありがとです!」
私は、スライムさんの指示にしたがって、低い机の上に木を積む。
「まず、みっつ、ぴったりならべます」
「ふむふむ」
「そしたら、そのうえに、またみっつ。こんどは、こうささせるように、おきます」
「こうかな」
縦に3つ。
次は、上に、横向きに3つならべる。
「そうです!」
そういう形で積み上げていく。
形がきっちり同じようで、積んでいっても安定感があった。
「結構高くなったね」
小さい机を出してその上でやっていたら、私の胸くらいの高さまできた。
「これで完成だね」
「まだです」
「えっ?」
私は木が入っていた箱を見た。
「もうないけど」
「これを、ぬくんです」
「抜く?」
「ぬいて、のせます」
「? こう?」
私は、途中の段から真ん中のひとつを抜いて、一番上にのせた。
ひとつ抜いても安定しているから、むずかしくはなかった。
「これが、あたらしいしごとです」
「これが?」
「はい。できるだけ、たくさんぬいて、のせる、しごとです!」
「へええ……」
私はあらためて木の塔を見た。
「でもこんなの、誰がやっても……。いや……。抜き方があるのか」
私は別の段の、3つならんでいるうちの、端の棒を取った。
真ん中を抜くと安定するけど、ひとつしか抜けない。
でも端だとふたつ抜ける。
両端を抜くと、中心の一本だけになった。
「こういうこと?」
「さすがえいむさん!」
「これを、できるだけ高くしていくと、お金がもらえるの?」
「…………、そうです」
いま決めたのかな?
「変わった仕事だね」
「しごとというのは、いきている、ひとのかずだけあるのです……」
「あっ」
話をしながらやっていたら倒してしまった。
音を立てて塔が倒れ、半分くらいの高さになってしまった。
「これは、むずかしいかも?」
「ゆだんしたころにたおれる、おそろしいしごとですよ!」
「気をつけないと。これは、スライムさんの新しい仕事なの?」
「ちがいますよ」
「? じゃあ?」
「あそびです」
「遊び?」
「ふっふっふ。これが、かくめいです!」
スライムさんは、びしっ、と言った。
「ぼくは、ほかのひとが、しごとでやるものを、あそびにしてしまうんですよ!」
「なんだって!!」
私は大きな衝撃にふるえた。
「みんなが仕事でやっているのに……?」
「そうです!」
「それは……。なんだか、わるいことを、しているみたいだね!」
「そうです! しごとをあそびにしてしまう……。たおしても、しごとのひとは、こまりますけど、あそびのひとは、あらら、でおわりです!」
「おやつを食べながらでも、できちゃうね」
「ふっふっふ」
「ふっふっふ」
私たちは、悪い顔で笑った。




