266 スライムさんと経済
「きょうも、えいむさんは、すごいですねえ」
スライムさんが、カウンターの上で、しみじみと言った。
「なにがどう、すごいかどうかは、いちいちいいなおすと、たいへんなのでいいませんが。えいむさんは、すごいですねえ」
「そんなにほめなくても。スライムさんもすごいよ」
「えいむさんですよ。すごいのは。これは、とうちほうです!」
スライムさんは、きりっ、とした。
それから、おだやかに、ほほえんだ。
「これじゃ、すらやすですねえ……」
「すらやす?」
「すらいむやす、です!」
「……スライムが、安いってこと?」
「はい! けいざいようご、です!」
スライムさんは、きらっ、と目を光らせた。
「経済って、じゃあ安売りってこと?」
「ちょっとちがいます! たとえば、べつべつのくにで、おかねをこうかんするとき、どちらかのおかねのかちがあがると、もうかたほうのおかねのかちが、やすくなるので! ぼくとえいむさんなら、えいだか、すらやすです!」
「エイ高、スラ安」
「はい!」
「むずかしそうな話だね」
私が言うと、スライムさんは、左右にささっと動いた。
首を振っているのかもしれない?
「かんたんです! やすくなったら、やすくなった! たかくなったら、たかくなった! って、いってるだけですから!」
「そういうことなの?」
「はい! みたままをいう、それが、けいざいです!」
「それが経済」
「スラがやすくなったら、この先、よろずやのかちも、さがるかもしれない……」
「そのままだね」
「はい!」
「それが経済?」
「はい!」
私も、経済がすこしわかったかもしれない。
「スライムさんは、ものしりだね」
「ふふ! おや? すらだかですね!?」
「スラ高、エイ安?」
「はい!」
「エイ高スラ安からの、スラ高エイ安。いま、どっち高?」
「なぞなぞですか?」
「質問」
「それは、みたままです! けいざいは、みたままなので!」
スライムさんは、むん、と体を張った。
「私、ちょっとわからないんだけど」
「ぼくもわかりませんね……」
「ということは、どうなるの?」
「みたままでわからないということは……。これは、けいざいのもんだいでは、ありませんね」
スライムさんは、重々しく言った。
「経済じゃ、ない……?」
「はい」
「エイ高、スラ安という話は、スライムさんが始めたのに……?」
「ぼくも、おどろいています。まさか、こんなことになろうとは……」
スライムさんは、唇? をかんだ。
「でも、こういうことは、よくあります……。みただけでわかるはずが、わからなくなるのです……。それもまた」
「経済」
「そのとおりです」
スライムさんは、お店の外に出た。
私もついていく。
「けいざいは、みればわかるような、かおをして、ひとを、とりこみます」
「そうなんだね」
「きをつけましょう。えいむさん」
「わかった」
私たちは目を合わせた。
うなずく。
「けいざいは」
「見てわかるくせに、わからない」
「はい!」
「見てわかる経済は、薬草を買うこと!」
「はい!」
「じゃあ、薬草ひとつください!」
「そのまえに、きょうはさむいので、おちゃをいれます! やくそうをたべながら、まっててください!」
「ありがとう。……おや?」
買おうとしている薬草とは別に、無料で薬草を食べる。
たしかな、経済さえ、くずれていく……?
これは、経済危機……!?
「スライムさん、経済危機について教えて!」
「えいむさん! もう、そこまで!? えいだかがすごいです!」




