265 スライムさんと瓦
「しんせい、ひん……」
スライムさんが、ぼんやりと、箱の中を見ていた。
「これはなに?」
お店の前にある箱に、板のようなものが入っている。
10枚くらいだろうか。黒っぽくて、かたそうな板だ。
「しんせいひんの、かわらです!」
「河原?」
「はい!」
「水辺で使うの?」
「ちがいますよ。いえ、ちがいますよ……」
スライムさんが言い直した。
「どっち?」
「じつは、かわらのじょうほうを、あいまいに、きいたままで……てへへ」
スライムさんが笑う。
「うっかりだね」
「はい! てへへ」
「てへへ」
私もやってみた。
悪くない。
「で、どんな情報?」
「どういうつかいかたをするのか。ということです。かわらは、やねの、ざいりょうとしてつかうとか」
「とか?」
「しょくざいを、やくときに、つかうとか」
「食材を?」
料理に使うんだろうか。
「あとは、ちからのつよいひとが、わって、すごいんだぞ! ってやったりとか」
「バラバラだね」
「はい! どれが、ただしいのか……」
私は、箱の中を見た。
「ちょっとさわるね」
「はい!」
持ち上げると、ずっしり重い。
でも金属ではなさそうだ。
「ふむふむ。これ、持つところがないよね」
「そうですね」
「じゃあ、食材を焼いて料理に使うのは、むずかしそうな気がする」
焼くとしたら、持っていられたほうが便利だ。
「! たしかに! ひとつ、かのうせいが、きえましたね!」
スライムさんは、一回、かわらにさわった。ぷに。
「屋根の材料に使うとしても、ちょっとよくわからないなあ。重いし、バラバラだから、落ちやすそうだし、危なそうじゃない? 固定するとしても、だったら、木のほうがよさそう」
「たしかに! これも、きえそうですね!」
ぷに。
「あと、力の強い人が割る、っていうのも謎だよね」
「といいますと?」
「だって、なんで割るの? 割るために作ってるにしては、手がこんでるっていうか。ちゃんとしてる」
私は、他のかわらも見ていった。
どれも同じ形をしている。
「ちゃんと、一枚一枚作ってると思うんだけど。割るだけだったら、これも、木の板でもよくない?」
「たしかに!」
ぷに。
「えいむさん、ぜっこうちょうですね!」
「でも、そうなると、全部、可能性がなくなっちゃうんだけど」
「えいむさん。だいじなことを、わすれていますよ……」
「なに?」
「ぼくがいったことが、すべてでは、ないということを……」
「おや? 流れが変わってきたね」
「かわらのつかいかたが、わからない。ということは、どういうことですか……?」
「うーん」
使い方がわからないのだから、わからない。
これは、なんだかわからないもの。
……いや。
「無限の可能性が、ある?」
「!! すばらしい!」
スライムさんが、ぴょん、ととんだ。
「そのとおりです! わからないことは、いきどまりではありません! むしろ、むげんにひろがるせかいが、いま、ぼくらのまえにあるのです!」
「かわらが、むげんを、おしえてくれたんだね!」
「そうです!」
私たちは、草原で横になった。
空を見る。
「いい天気だね……」
「はい……」
「なんだか、今日は、ぽかぽかあたたかく感じられるよ」
「これが、むげんです」
「むげんって、気持ちいいね」
「はい!」
私たちはいっしょに、むげん、を楽しんだ。




