262 スライムさんとぬいぐるみ
「今日もよろず屋、ふんふんふーん。……あれ? これは?」
お店の前に置いてあったのは、ぬいぐるみだった。
女の子だろうか。
全体の大きさは、私の頭くらい。頭と体が同じくらいの大きさにつくられたものだ。
「忘れもの……?」
「ちがいます!」
スライムさんの声がした。
入り口の中をのぞいていたら、こっちです、とスライムさんの声。
店の裏側からやってくる。
「それは、おむかえを、しています!」
「ああ、そうなんだ。こんにちは」
私はぬいぐるみの頭にそっとさわった。
「えいむさん、えいむさんですね!」
「どういうこと?」
「それは、えいむさんです!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「私?」
「そうです! このおみせの、かんばんともいえる、ぬいぐるみを、つくりました!」
スライムさんが、ばーん! と言った。
「このお店の?」
「そうです! いずれ、はんばいして、だいはんじょうです!」
「だったら、スライムさんのぬいぐるみのほうが、いいんじゃない?」
「ふっふっふ。あまいですよ、えいむさん。あまいやくそうくらい、あまいです!」
「ほどほどだね」
「はい!」
スライムさんが、きりっ、とした。
「ぼくの、ぬいぐるみをつくるとします」
「うん」
「それだと、よろずやの、きぶんはあじわえます。ですが?」
スライムさんがなにかを待つように私を見る。
「うん? うーん。どういうこと?」
「えいむさんのぬいぐるみがあれば、ぼくの、きぶんを、あじわえますよね?」
「あー。なるほど」
私はよくこのお店にいる。
ということは、私を横においておけば、ぬいぐるみの持ち主は、あたかも、スライムさんになったかのような気分になれる。
「そういうこと?」
「はい!」
「でも、私はこのお店の人じゃないよ」
「ぼくも、ひとじゃないです!」
スライムさんは、にやりとした。
「すらいむじょーくです」
「やるね」
「ふっふっふ!」
「たしかに、私みたいな美少女のぬいぐるみだったら」
「あっ、ちょっとすいません」
スライムさんは、横を向いて、目をぱちぱちさせた。
「あ、すいません。めにごみが、ちょっと。もうとれました!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「それで、なんの話でしたっけ?」
「ううん、なんでもない」
「でも、なにかだいじなことを、いっていたような?」
「言ってない」
「え? でも」
「言ってない。それより、やっぱり、スライムさんのぬいぐるみもいると思うなあ」
「えいむさんのぬいぐるみじゃ、だめですか?」
「……なら、両方?」
私が言うと、スライムさんはぶるん、とゆれた。
「たしかに! ぼくは、どちらかがいいと、おもっていました!」
「もうてんだね」
「はい! ぼくのような、かっこいいすらいむも、ほしいですよね!」
「それに、私みたいな美少」
「あっ、ちょっとすいません」
スライムさんは、横を向いて、目をぱちぱちさせた。
「あ、すいません。めにごみが、ちょっと。もうとれました!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「それで、なんでしたっけ?」
「……スライムさんを売る?」
「なんですと!?」
スライムさんはぶるるん、とふるえた。




