258 スライムさんとすもう
「のこったー! のこったー!」
声のするほうへ歩いていくと、河原に出た。
水の流れの横を、石ころがたくさんならんでいる。
そこで大きな声を出しているのが、青くて透き通っている、丸いものだった。
「スライムさん?」
私の声に、振り向いた。
「おや? えいむさん……?」
「こんにちは!」
「えいむさんは、よろずやにしか、でかけないのでは……?」
「他の場所で会ったこともあるでしょ」
「ふふ……。すらいむじょーくです」
スライムさんは、にやりとした。
「スライムさんは、なにしてたの」
「ひみつ、といいたいところですが……。おしえません」
「それは秘密なのでは?」
「ふふ……。すらいむじょーくです」
スライムさんは、にやりとした。
「おしえましょう。……すもうです」
「すもう?」
「はい。のこったー!」
スライムさんは、大きな声で空に向かって叫んだ。
ちょっとひびいた。
「それが?」
「すもうです!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「すもうというのは、のこった、というこえが、より、きれいなほうが、かちです!」
「のこった?」
「はい。のこったー!」
「のこったー!」
私も言ってみた。
「いいですね!」
「きれいっていうのは、誰が決めるの?」
「おたがいの、こころです……」
「勝負してればだいたいわかる。そういうこと?」
「そのとおりじゃ……」
スライムさんが、長く生きてきたおじいさんのような風格で言った。
「言ってみる?」
「のこったー」
「のこったー」
「のこったー」
「のこったー。ねえスライムさん」
「なんですか?」
「なにが、残ったの?」
私が言うと、スライムさんは目をぱちぱちさせた。
「えいむじょーくですか?」
「ちがうよ。残った、って言ってるから、なにか残ったのかと思って。勝負に関係あるのかな」
「のこった? こえが、きれいかどうかより、のこったかどうかが、だいじ?」
スライムさんは、ちょっと止まった。
「でも、それなら、おかしくないですか?」
「なにが?」
「のこるのが、しょうぶなら、のころう! のこって! じゃないですか? のこった、っていうのは、なんだかおかしいような、きがしますけど」
「なるほど!」
残った、だと、もう勝負は終わっている。
でも残った、と何度も言うのは、残りそうな状況では、おかしい。
勝負をしてるなら、残れ! 残ろう! 残します!
そういうことなんじゃないだろうか?
「ということ?」
「そうです!」
「そうだね。だったら……。石ころを投げるとか?」
「どういうことですか?」
「石ころを、大きい石ころに投げてみるでしょ」
私は小石を軽く投げた。
大きな石にのった。
「のった。これも、石の上に残った、ともいえるよね?」
「はい!」
「こうやって、台になにかを投げて、そこにのせる遊びかもしれない。ううん、のせて、それから……。先に、いい声で、残った! っていう遊び。そういう可能性は?」
「……ありますね!」
スライムさんは、目を見開いた。
「ぼくも、すもうを、かんぜんにしっているわけではないので! これで、すもうができます!」
「あってるかは、わからないけどね?」
「あってます! せいかいです! これはすらいむじょーくではないです!」
「スライムさん」
「えいむさん!」
「やろうか」
「はい!」
私たちは、河原ですもうをして遊んだ。
「いまのは、えいむさんのこえ、きれいでしたよ!」
「スライムさんこそ」
「へへへ」
「ふふふ」




