254 スライムさんと深呼吸
「すっきり晴れてるね」
スライムさんと、お店の前に出て空を見た。
雲がほとんどなく、青い。
「そらが、どうしてあおいか、しってますか?」
「知らない」
「ぼくもですよ……」
スライムさんは、さびしげに笑った。
「……ところでえいむさん。かんたんに、けんこうになるほうほう、ききました!」
スライムさんは元気に言った。
「かんたんに健康?」
「しんこきゅうです。しってますか?」
「知ってるよ」
大きく息を吸って、はく。
「やったこと、ありますか?」
「うん」
私が言うと、スライムさんはちょっとしぼんだ。
「せっかく、いっしょにやろうとおもって、やらずに、まってたんですけど……。やったこと、あるんですか……」
「あ、えっと……」
「じゃあ、ぼくは、ひとりで、いまさら、やります。きょうから、ぼくは、すらいむじゃなくて、おそいむ、とでも、よんでください」
スライムさんは、さびしげに笑った。
「あ。そうそう、私の深呼吸は、練習だった」
「れんしゅう?」
スライムさんが、すこし体の張りをとりもどした。
「どういうやり方をするのかの確認だった。だから、これから本当に深呼吸をする」
「? ということは、どういうことですか?」
「一緒にやろうっていうこと」
「! わかりました!」
スライムさんは、ぴょこぴょこした。
「じゃ、やりますね!」
スライムさんは、息を吸った。
「スライムさん、深呼吸をうまくやるこつはね。まず、いっぱいはくことだよ」
そうすることで、肺を空っぽにして、吸えるようになる。
はかないと、無理やり体に空気を詰めこむようになってしまって、息の行き場所がなくなってしまうのだ。
と母が言っていた。
でもスライムさんは、はかずに吸っていく。
おやおや、スライムさん。
それでは深呼吸ができませんよ?
そう思っていたら、スライムさんがみるみるふくらんでいく。
私の腰くらいの高さになって、肩くらいの高さになって、私の身長くらいにまでなってしまった。
「スライムさん!」
「どうですかえいむさん! すごいでしょう!」
スライムさんは、いつもよりも、すこしひびく声で言った。
「それより、だいじょうぶなの?」
「なにがですか?」
「そんなにふくらんだら、痛くない?」
「ぜんぜん、へいきですよ!」
そう言って、さらにふくらもうと、息を吸う。
「スライムさん、終わり、終わり」
「どうしてですか? こんなにすえてるのに」
「だって、そんなに吸ったら、破裂しちゃうかもしれないよ!」
「またまた、えいむさんは、しんぱいしょうですねえ」
スライムさんが、ひびく声で笑う。
「みずのときも、へいきですよ!」
「水は、増えてるからいいけど、空気は、スライムさんがうすくなってるでしょ?」
いつもの透き通った青も、もうかなり透明になってきている。
「またまた」
「またまたじゃなくて」
「たまたま?」
「偶然じゃなくて!」
そのときだった。
スライムさんがちょっと笑うと、一瞬にして空気が全部出た。
私に強風が吹きつけ、思わずよろけてしまった。
目を開けたときには、スライムさんはいつもの大きさになっていた。
「だいじょうぶですか、えいむさん!」
「逆だよ、スライムさんがだいじょうぶ!?」
「ぼくはすらいむです」
「よかった。変なところはない?」
「ちょっと、ぶかぶかですかね」
スライムさんが移動しようとすると、いつもは、ぴょん、ぴょん、と動けるのに、いまは、なんだか、ぺたん、ぺたん、となる。
「だいじょうぶかな」
「へいきです!」
お店の裏で水をかけたら、ちょっと大きくなったけど、張りが出た。
「よし」
「はい!」




