253 スライムさんと美女パネル
「こんにちは」
いつものようにお店に入ると、きれいな女の人が微笑んでいた。
「こんにちは」
「わっ、こんにちは! あれ?」
よく見ると、人じゃない。
板に、きれいに描いてある人だった。
人の形にそって、切り抜いてある。
カウンターの裏から、スライムさんが出てきた。
「ぼくでしたー」
「やるな!」
「ふっふっふ! そして、これは、びじょです!」
「それはわかるけど」
私は、カウンターに立てかけてある板をあらためてよく見た。
美女の絵が、きっと、実物大で描いてある。
私よりも身長が高くて、母と同じくらいだろうか。
きれいな人だ。本当に存在する人なのか、それとも、絵を描いた人が想像で、自分のきれいだと思う人の絵を描いたのか。そう思うくらい整った顔をしていた。
でも服装は、貴族のような服ではなく、一般的な服装だ。
「このうしろから、こえをだすことで、びじょが、はなしているかんじになります! そうして、うそのびじんのせっきゃくで、おきゃくさんがたくさんくる! そういう、さくせんです!」
スライムさんは言った。
「なるほど? でも、本当に美女が話しているわけじゃないよね?」
声もスライムさんの声だ。
「いいんです! かりに、こえが、おとこのひとであっても」
「男の人でも?」
「そうです! おきゃくさんも、わかっているのです! わかっていても、びじょがはなしをしている、とおもったほうが、おきゃくさんも、たのしいのです!」
スライムさんは言う。
私は考えた。
「男の人は、美女がいたほうがいいってこと?」
「そうです! おんなのひともです!」
「たしかに」
美女を見て悪い気はしない。
「びじょが、せっきゃくを、してくれる! だったら、びじょが、いると、おもったほうが、いいでしょう!」
スライムさんは、美女のうしろにまわった。
「いいでしょう?」
スライムさんは、すこし高い声で言った。
「たしかに」
みんなが望んでいる。
それをやれば、みんながしあわせだ。
「なるほどね」
「ゆくゆくは、ぼくのうごきにあわせて、からだもうごく。そういうのが、いいとおもいます! びじょすらいむすらね!」
「特徴を出してきたね」
「はい!」
「でも、美女だったらここにいるけどね」
スライムさんは、きょろきょろした。
「びじょ?」
「こ、こ、に」
私は、自分を指した。
「?」
スライムさんはふしぎそうに見ている。
「どういうことですか?」
「あ、なんでもない」
「どういうことですか?」
「なんでもない。なんでもない」
「えいむさん、かおがあかいですよ?」
「なんでもないなんでもないなんでもない」
「ねつですか? いい、やくそうがありますよ!」
「なんでもない!」




