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250 スライムさんと塩

 くもりの日。

 暑くも寒くもなく、そんなに暗くもなくて、すごしやすい日だった。


 私がいつものようにお店に向かうと、青くて丸い、透き通ったものがなにか動いている。

 スライムさんだ。


 私に背中を向けて、みょこみょこ動いている。

 なにをしているんだろう。

 

 なんとなく、スキップで近づいてみた。

 スライムさんが振り返る。

 私はスライムさんの前で、すたっ、と着地した。


「こんにちは」

「こんにちは! どうしたんですか、スキップさん」

「ちょっとそういう気分だったので」

「いいですね!」

「ナゾイムさんはなにしてたの?」

「ぼくは、しお、をもっていました」


 スライムさんは、入り口の横にいた。

 入り口の横のところに置いてある小皿に、白い粉があった。

 だいたい、コップ一杯に、いっぱいに入れたくらいの量だ。


「塩?」

「いりぐちに、しおをもると、いいことがあります」

「いいこと?」

「おきゃくさんが、きます」

「おお」

「まものを、よけられます」

「おお!」

「すごくいいです!」

 スライムさんは、きりっ、とした。


「だれかにきいたの?」

「はい! とおくからきた、おきゃくさんです!」

「でも、スライムさんも、魔物だよね」

「……おきゃくさんが、きます!」

 スライムさんは、きりっ、とした。


「じじつ、えいむさんは、きました!」

「たしかに」

「かせつは、じっしょうされた。じつにおもしろい!」

 スライムさんは、きりっ、とした。


「きりっ!」

 きりっ、と言った。


「じゃあ、よかったね」

「でも」

 スライムさんは、すこし不安そうにした。


「もうすこし、とがらせたいんです!」

「とがる?」

「しおです!」


 たしかに、塩は自然に流し込んだようになだらかな曲線を描いている。


「先を?」

「はい!」

「こう?」


 私は、手で塩をつまんで、すこしとがらせてみた。

 集めて、もうちょっととがらせる。

 もうちょっと。


 針のようにとはいかないけれど、ペン先のような角度がついてきた。


「どう?」

「えいむさん……。もう、おぬしにおしえることは、ない……」

「師匠……!?」

「そつぎょうだ……」

「ありがとうございました……!」


 私は頭を下げた。


 そしてお店の中に入る。


「やくそうでも、たべましょう!」

「そうだね」


 それから雨が降ってきたので、しばらく雨宿りをした。


「あしたは、さとうを、もってみようとおもいます!」

「砂糖は、虫が来ちゃうんじゃない?」

「! もう、おぬしにおしえることは、ない……」

「師匠……!?」


 そんな話をしながら、外の雨の音が強くなってきた。


 はっとした。

 さっきとがらせた塩の山はもう、塩水になっているかもしれない。

 でも塩水になったらどうなんだろう。

 効果はないんだろうか。


 塩水がかわいて、元通りの塩にもどったりしたら、どうなんだろう。


「えいむさん、どうしましたか?」

「考えごと」

「いいですね! ぼくも、かんがえます!」

「……」

「……」


 雨の音が続いていた。

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