249 スライムさんと玉手箱
「うーん、どうしますかねー」
スライムさんがなやんでいた。
お店の前でなやんでいた。
お店の前の、置きっぱなしになっている、開いた大きな箱の中を、見たり、見なかったりしながらなやんでいた。
私はそれを見ていた。
横の壁から顔を出して見ていた。
「うーん。うん?」
スライムさんがこっちを見た。
「えいむさん!」
「こんにちは」
「いったい、いつから……?」
「スライムさんが、荷物を開けて、中を見てなやんでいるところから」
「けっこう、まえ……!!」
「どうしたの?」
「じつは……」
スライムさんは箱の中を見た。
私も見た。
箱は、スライムさんが中に入っても隠れられないくらいの大きさだった。
箱の中に、黒い、別の箱が入っていた。
黒箱の下の方に、金色の波の模様がぐるっとまわっている。
また、箱全体を、ひもが一周していて上でしばってある。
「おまけです!」
「おまけ?」
「はい。しなものを、かったら、おまけでもらいました」
「ふうん?」
「でも、あけたらいけないらしいです」
「ええ?」
「なんでそんなものを?」
「すきをみせたら、おまけで、もらっていました」
「スキを」
「はい!」
「困ったね」
「……ふっふっふ。えいむさん」
スライムさんは、体を左右にゆらした。
「かざっておくだけの、つぼ、しってますか?」
「そういうのもあるみたいだね」
「かざっておくだけの、けん、しってますか?」
「そういうのもあるみたいだね」
「かざっておくだけの、はこがあっても?」
「おかしくないね」
「でしょう!」
スライムさんは、でしょうでしょう、そうでしょう、とくりかえした。
「つまり、かざっておけばいい。そういうことです!」
「なるほど。私が、浅はかだった……」
私は、地面にひざをついた。
「えいむさん!?」
「私は、考えが、たりなかった……」
「いいんですよ!」
スライムさんが、横にやってきて、ぷに、とひざをさわった。
「みんな、かんがえなんて、たりないんですから!」
「みんな考えがたりないの?」
「そうです! たりてる、というかおをしているだけです!」
「そうだったのか。じゃあ、私はたりなくても?」
「へいきです!」
スライムさんに言われてみると、なんだか元気が出てきた。
私は立ち上がる。
「よーし。じゃあ、今度から、たりてるようにしよう!」
「そのいきです!」
スライムさんも、ちょっと縦にのびた。
「今日のところは、この箱をお店の中に運ぶね」
「おねがいします!」
私は、黒箱を手にとった。
片手で持ったのがよくなかったのかもしれない。
箱を持ち上げたとき斜めにしたら、ひもがゆるんだ。
あ、と思ったときには、ふたがななめに滑った。しっかり閉じているように見えたけれど、ふたは、見た目よりも、下の箱にかぶさっているわけではなく、ちょこん、とのっかっているだけだったみたいだ。
箱が開く。
白い煙がたくさん出てきた。
「わっ!」
「わわっ!」
私たちは煙に包まれた。
もくもくと、いっぺんにまわりが見えなくなる。
「スライムさん、いる?」
「います!」
「これ、吸ったらまずいのかな?」
「……だいじょうぶです!」
スライムさんは言い切った。
しばらく待っていると、煙が晴れた。
スライムさんは、いつもどおりだ。
「私、真っ白になってる?」
「なってません! いつものえいむさんです!」
「スライムさんも白くないよ」
「やりました!」
落ちていたふたを見た。
つるつるの黒いふたは、私の顔を反射して映し出していた。
私の顔だ。
「なんだったんだろう」
「そういえば、どこかへ、いってから、これをあけると、なにかに、なってしまうらしいです!」
「どこか行って、なにかになる……」
「そんなことをいってました!」
「そっか。まあ、私たちは関係ないよね」
「はい!」
私は、箱をひもでしばって、元通りにし、お店の端のほうにならべておいた。
「なかに、やくそうをいれても、いいかもしれませんね……」
「忘れて、干からびないようにね」
「……それもまた、やくそうです」
「だめ」




