243 スライムさんと歩幅
「こんにちは!」
「あれ、こんにちは」
もうすぐお店だ、というあたりでスライムさんが現れた。
どうする?
たたかう
にげる
→「こんなところで、どうしたの?」
「ちょっと、気になることがありまして」
そう言いながら、スライムさんはちらちら下を見る。
「気になること?」
「ぼくの、ほはばって、どのくらいですか……?」
「スライムさんの歩幅……?」
私は足を止めた。
むずかしい。
「足がないから、歩幅もない」
「そうですか……」
スライムさんが下を見た。
「と言ってしまうのはかんたんだけれど」
「そうですか……?」
スライムさんが視線を上げた。
「歩幅がある、可能性がある。私はそう思う!」
「なぐさめですか?」
「いいえ」
私はすぐ言った。
「……私は、そもそも、歩幅のことをよくわかっていない」
「えいむさんは、ほはばを、わかってない?」
「そう」
私はゆっくりうなずいた。
よろず屋に向かって歩く。
スライムさんもついてくる。
「歩幅について、考えてよう」
私は、右足だけぐいっ、と前に出した。
「どこが歩幅だと思う?」
スライムさんは、私の、足と足の間を見る。
「このへんです」
「両方の、足と足の間の、空間?」
「はい!」
「私も思う」
「やりました!」
「でも」
私は、足をもどした。
右足だけをすこし前に出す。
左足のつま先より、右足のかかとが出ていない。
「これだと?」
「あいだがないので、ほはばがないです!」
「前に出したのに?」
「! おかしいですね!」
「ということは、前に出した足のかかとと、うしろの足のつま先の間は、歩幅じゃない」
「まえのあしの、つまさきと、うしろのあしの、かかとの、あいだですか?」
「たぶん、そう」
私はうなずいた。
両方のつま先とつま先、を比べるのだとすると、変な気がする。
歩幅なんだから、最低でも足ひとつぶんはあるんじゃないだろうか。
ということは、出した足のつま先と、うしろの足のかかと。
スライムさんと同じ結論だ。
「ほはばが、わかりました!」
「私は、こんなことも考えず、歩幅を知った気になっていた。ダメイムだ」
「えいむさんは、だめいむじゃないですよ!」
「スライムさん?」
「だめだとしったとき、それは、だめではなくなった、しょうこなのです!」
スライムさんは、強い目で私を見た。
「そうだね。ありがとう!」
「どういたしまして!」
「ということで、スライムさんに、歩幅がある可能性が出た」
「ぼくに?」
「うん」
「歩いてなくても、最低、足ひとつぶんが、歩幅なのだとしたら」
「だとしたら?」
「スライムさんの、体が、地面についている部分。これが、スライムさんの、最低限の一歩なのかもしれない」
「これが……?」
スライムさんは、ちょっと上にのびて地面と接している面積を減らしたり、逆にちょっと広がって面積を増やしたりした。
「歩幅をあやつってるね」
「ふっふっふ」
私は、おおまかに、そのへんを歩いた。
スライムさんもぷにぷについてくる。
「私の一歩分って、どのくらいだった?」
土のところを歩いたとき、地面に足あとが残っていた。
「これくらいですね」
スライムさんが近くで確認する。
「これって、私の身長からすると、どれくらい?」
「……? はんぶんも、ないくらいですかね?」
「そうだね。……そうだね!」
「なにかおもいついたんですか?」
「うん。身長説」
私は、自分の身長と、歩幅を比べてみた。
「身長の半分もいってないくらいなのが、私の歩幅だとして。もしかしたら、身長から、歩幅を計算する、という手もあるのかもしれない」
「しんちょうから!?」
「そう。歩かなくてもわかってしまう」
「わかってしまう!」
「足がなくても」
「あしがなくても!」
スライムさんは、ぷるぷる震えた。
「スライムさんが、人間だったとしたら、身長から、足があったらどれくらいか、予想できてしまうかもしれない」
「ぼくがにんげんに!」
「どう?」
「しりたいような、しりたくないような!」
「じゃあ、やめておく?」
「……しります!」
「いいの?」
「しっておきたいです! それに! どうせ、にんげんではないので、さんこうですし!」
「そうだね」
私はスライムさんと、私の身長を測って、それを地面に書いて、一歩も測って、それも地面に書いて、比べて、割合を出して。
スライムさんに当てはめてみた。
「ほほう……」
「ほほう……」
なるほど。




