238 スライムさんとエルフの耳
「ふんふんふふーん」
とよろず屋から出てきたスライムさん。
いつもとちがうのは。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ! きょうは、そとまで、おでむかえしました!」
「よくわかったね」
「ちらっとみえました!」
「ところで、その耳? はなに?」
スライムさんの顔というか、体の横には、耳がついていた。
私の耳に似た形と色だけれど、上に長い。とがったような形をしていた。
「えるふの、みみです!」
「エルフ?」
「そうです!」
スライムさんは、体を動かすことで耳をぴくぴくさせた。
「これは、えるふのみみです! えるふ、なりきり、ぐっずです!」
「ふうん?」
「えいむさん、つけてみてください!」
スライムさんは、足にぐいぐい体を押しつけてくる。
「私が?」
「はい!」
スライムさんから耳を外すと、中は空洞だった。
私の耳の上からかぶせることができる。
「にあいます! つけごこちは、どうですか?」
というスライムさんの声が、こもって聞こえる。
「ちょっとこもってるけど、ちゃんと聞こえるよ」
「そうですか! これでえいむさんも、えるふですね!」
スライムさんは、ふふん、とじまんげだった。
「エルフってなに?」
「えいむさん、しらないんですか?」
「うん」
「えるふっていうのは、みみがおおきい、しゅぞくです」
私は耳をさわった。
「大きいだけ?」
「おおきいと、よく、きこえますよね?」
「うん」
「そういう、しゅぞくです」
「よく聞こえ族なんだね?」
「はい!」
「……」
「……」
「それだけ?」
「えいむさん。それしかないなんていったら、かわいそうですよ」
「ごめんね、エルフさん」
「いいでしょう!」
エルフ代理スライムさんが許してくれた。
「……でも、ほかにも、えるふの、とくちょうはありましたけども」
「あったの? なに?」
「たしか、しつのいい、ばしゃを、つくるそうです!」
「馬車。手先が器用なのかな」
「はい。えるふのばしゃといったら、ゆうめいらしいです!」
スライムさんは、近くに落ちていた箱を押して進んだ。
「馬が、箱をうしろから押すタイプの馬車?」
「くわしくは、わかりませんが、えるふの、とらっ……。ばしゃといったら、ゆうめいなんですよ!」
「トラッ?」
「ばしゃの、べつのよびかたを、してたきがするので! わすれましたが!」
「忘れたの?」
「はい!!!」
スライムさんは言い切った。
「清々しいほど言い切ったね」
「はい! ごめんなさいね!」
「許そう」
「ありがとうございます!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「私も、エルフのトラッ、乗ってみたいなあ」
「いいですね! ……あ、だめですね」
「なんで?」
「えいむさんは、そういう、くるまは、やめたほうがいいです」
「どうして?」
「やめたほうがいいです。なぜなら、やめたほうがいいからです!」
「そう。そこまで言うなら、やめようかな」
「はい!」
スライムさんは、ほっとしていた。




