237 スライムさんときゅんです
「とりですね」
スライムさんと、お店の裏で薬草をとっていると、鳴き声がして上を見た。
緑色の鳥がいる。枝にとまっていた。
「おいしいですかね?」
「あれは食べないんじゃない?」
あまり、食べるのに向いていない気がする小鳥だ。
色が鮮やかな緑。鮮やかすぎる色の生き物は、食べたらいけない気がする。
「えいむさん! きゅんです、やってください!」
「きゅんです? なにそれ」
「まず、ひとさしゆびと、おやゆびを、あわせてください!」
スライムさんの説明によると、ふたつの指の、第一関節あたりを合わせるらしい。
「それで、きゅんです、といってください!」
「きゅんです」
「そうしたら、その、きゅんですのあいだから、とりをみてください!」
私は、ふたつの指でできた、く、のへこんでいる部分に、鳥を合わせるように手を構えた。
「こう?」
「そうです! そうすると、どうですか?」
「なんだか……。えものを、狙う感じ?」
「! やりますね、えいむさん!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「ぼくがきいたはなしによると、ゆみを、かまえるとき、そうやってえものをみることで、ねらいやすくなる、というはなしでした!」
「ふうん?」
私は弓を持っている想像をしてみた。
うまく、弓を持てるだろうか?
「でも、練習としてはいいかもね」
「はい!」
私は、もう一度、きゅんです、をした。
ふと、視線を感じた。
「スライムさんも、きゅんです、したい?」
「……ごほ、ごほ。ぼくはもう、きゅんです、はできない、からだなので……」
「最初からでしょ」
「てきびしいですねえ、えいむさん!」
「私がやるから、そこからきゅんです、見てみたら?」
「! なるほど!」
しゃがんで、スライムさんを抱えるようにしながら、スライムさんの前に手を出す。
「こう?」
「もうちょっとしたです」
「こう?」
「きゅんです! ぼくも、きゅんです、でとりをねらえました!」
「やったね」
「はい!」
「でも、きゅんです、って言うと、声で逃げられたりしないのかな」
「……だいじょうぶです!」
スライムさんがはっきり言うと、鳥が飛んでいった。




