236 エイムとお腹が痛い気がする
「気になることがあるんだよね」
私は、よろず屋の壁に、もたれながら言った。
「どうかしましたか? なんだか、けだるげ、ですね」
「お腹が痛い、気がする」
「大変です!」
スライムさんが、ぴょん、ととんだ。
「この、どくけしそうを!」
「でも、まだ痛くないんだよ」
「……どういうことですか?」
スライムさんは、ぱちぱちとまばたきした。
「痛いような、気がするだけ。気がするだけだから、まだ痛くないの」
「まだいたくない……?」
私はうなずいた。
「なんていうか、お腹が重いような、冷たいような、押されてるような、そんなことに……」
「ことに?」
「なりそうな感じ」
私は、きりっ、とした。
「なりそう」
「このまま今夜、お腹を出したまま寝たりしたら、確実にお腹をこわすだろうな、という感じ」
「かくじつに!」
「でも、きちんとお腹をかくして寝たら、平気そうな。いやそもそも、もしかしたら、こんなのは気のせいで、なにもなく終わるかもしれない。そんな感じ」
「えいむさんはいま、うんめいの、さかいめに、いる……?」
スライムさんは、ゆっくりと言った。
私はうなずいた。
「お腹を冷やさず、あたたかいものを食べたりすれば、助かりそう」
「つめたいものは、あぶない!」
「うん。そういうとき、毒消し草は、ちょっとちがうよね?」
「そうですねえ。まだ、ぐあいが、わるくないなら、はやいですねえ……?」
「でもおそらく今夜、私はお腹をこわす!」
「えいむさん!?」
スライムさんは、びくり、とした。
「最近、夜、暑くなってきてる。だから、私はきっと、二日連続で、ふとんを、はいでしまうだろう」
「えいむさん! きをつけましょう!」
「……それはできない」
私は首を振った。
「どうしてですか!」
「寝ているときの私は、私であって、私でないからだ」
「えいむさんじゃ、ない……?」
「そう。私がどうしようとしても、制御しきれない。そういう時間なんだよ。私は、寝ているときの私は、なにかちがうものに、乗り移られてしまったかのような……。私の意思に反した行動。そういう行動を、とってしまうんだ……」
「えいむさん……」
「……でも。私は、がんばってみようと思う」
私は顔を上げた。
「えいむさん?」
「眠ってしまっても、それでも、ふとんを、きちんと、かけたまま眠ろうと思う。そうして、お腹をこわさないで、朝を迎えたいと思う。できなかったとしても、やってみる!」
「えいむさん!」
「がんばるね! スライムさん!」
「そのいきです!」
私は、決意してよろず屋を出た。
家でも同じ話をしたら、母に腹巻きをもらった。




