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235 スライムさんと闇営業

 私は、紙を見ながら道を歩いていた。

 しばらく川沿いに歩く。最近はすこし暑いけれど、風が涼しい。

 川幅がすこしせばまってくると、対岸に大きな岩が見えた。

 紙を見る。人よりも背が高い、長細い岩。あれだ。


 そうしたら、川沿いから上がっていく。

 上り坂を進む。

 道の左右から枝が覆いかぶさるようなところで、薄暗い。ここもなんだか涼しい。


 二つに分かれた道は、右。

 紙で確認っと。


 今度は下っていく。

 鳥の声が聞こえた。ぴっぴっ、と笛を短く吹いたような声だった。


 道の右手は川に続く急な坂で、気がたくさん生えているので川は見えない。

 左手は土手だ。

 土手は土だったけれど、だんだん岩の壁のようになっていく。


「あった」

 立ち止まる。


 私の身長よりも高い岩の壁が続いている。

 その途中で、ぽっかりと穴があいていた。

 腰をかがめれば歩いて入れるくらいの穴だ。

 紙を確認する。ここでいいらしい。


 のぞいただけで、中はまっくらなことがわかる。

 空に雲がしきつめられた日の、夜のようだ。

 先に進むことをためらう。


「スライムさん?」


 呼びかける。

 すると、ちょっと先で、ぽっ、と明かりがともった。

 火のような光ではなく、青白い光だ。

 光の横で笑っているのは。


「いらっしゃいませ!」

 スライムさんだ。


 スライムさんの声が、わんわんわん、とひびく。


「こんにちは。今日はどうしたの?」

 私は中に入っていった。


 さっきよろず屋に行ったら、お店の前には、えいむさんよう、という箱があり、その中にこの紙が入っていたのだ。


「あまり、ひとには、いえないのです……!」

「どうして?」

「やみえいぎょうは、こっそり、やるのです……!」

 スライムさんは言った。


「闇営業?」

「はい! こうして、くらやみで、えいぎょうすることです!」

「それが闇営業なの?」

「そうです! やみえいぎょうは、とっても、もうかるそうです! おみせの、りえきをきにするえいむさんを、あんしんさせようと、おもいまして!」

「もうかるの……?」


 私はまわりを見た。


「誰も来ないでしょう?」

「えいむさんは、きました!」

「そうだよね……。もうかる?」

「やみえいぎょうは、もうかります!」

「そっか。じゃあ、そろそろ帰る?」

「なんでですか! やみえいぎょうは、はじまったばかりだ! すらいむさんのじかいさくをおたのしみに!

「なにか終わってる!」


 スライムさんは、箱を、すっ、と押した。

 中には薬草が入っていた。


「これを売ってたの?」

「はい!」

「誰か来た?」

「きません!」

「売れるかな」

「うれなかったら、たべて、かえりましょう!」

「そうだね!」


 私たちは、暗闇の中、薬草を前に、こそこそと話をしながら、お客さんを待った。

 闇営業は、こそこそするらしい。

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