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234 スライムさんと万置き

「ゆううつですねー」

 スライムさんが、カウンターの上で遠くを見ていた。


「なにがゆううつなの?」

「! ゆううつって、ゆーーつ、っていっても、きづかれませんよね?」

「ゆううつの話?」

「ちがいます!」

 スライムさんは、きりっ、とした。


「まんおきです!」

「万引き?」

「まんびきじゃなくて、まんおきです!」

「万置き? なにそれ」

「どこかから、もってきたしょうひんを、かってに、おみせにおきます!」

「ははあ」


 万引きの逆、みたいなことだろうか。

 逆でもないか?


「なんのためにそんなことを」

「はんざいしゃの、きもちは、わかりません!」

 スライムさんは、ぷるん、とした。


「たしかに」

「! えいむさん! そうやって、はんざいしゃを、まるで、にんげんではないように、あつかうのは、きけんですよ!」

「たしかに?」

「ぼくは、にんげんではないですよ!」

「スライムさんが犯罪者、みたいに話を誘導しないで!」

「ふふ。よくきづきましたね」

 スライムさんがにやりとした。


「それで、万置きをされたの?」

「されてません!」

「そっか。じゃあいいね」

「はい!」

「でも、よく考えてみると、万引きよりはいいけど、万置きも迷惑だね」

「わかりますか!」


 薬草を持っていかれたら商品がなくて、こまる。

 でも、どこのものだか知らない薬草を、勝手に置かれてもこまる。


「ぼくのおみせの、しょうひんに、じしんが、もてなくなります!」

「そうだね。よろず屋の薬草で、お腹をこわした、って言われてもね」

「そのとおりです!」

「で、万置きは、されては……?」

「いません!」

 スライムさんは、自信満々で言った。


「まだされてないけど、用心してるんだね」

「はい!」

「先読みスライムさんだね」

「はい!」


 元気に言ってから、すこし元気なさそうに、スライムさんがお店を見まわす。


「でも、ほんとうにおそろしいのは、しなぞろえです……」

「品ぞろえ?」

「まんおきを、されてしまうと、おみせのなかが、しらないもので、あふれてしまうんです……!」


 スライムさんは、ぐっ、と私に近づいた。


「知らないものであふれるの?」

「そうですよ! だって、しらないものを、おかれていくんですよ!?」

「一日で?」

「なんにちも、かけたら、いっぱい、おかれるでしょう!」

 スライムさんは、カウンターをおりて、私のすねに、ぺしぺし体当たりをする。


「こら! はんにん、こら!」

「私は犯人じゃないけど」

「しつれいしました!」

「……でも、毎日、調べたらわかるんじゃない?」

「そんなこと、やってられませんよ!」

「お店の中を、毎日、ちゃんと見てない……?」

「ぎくっ!」

 スライムさんは、ぴたりと止まった。


「品ぞろえを、見てない……?」

「ぎくぎくぎくっ!」

「……スライムさん。スライムさんに、必要なものが、わかったよ」

「なんですか?」

「万置き対策じゃなくて、お店の中を、すみずみまで見て、毎日、記録しておくことだよ!」

「……」


 スライムさんは、ぴょこぴょこと、無言でお店を出た。


「スライムさん?」

「……めんどうなことから、ぼくは」

「僕は?」

「逃げます!」

 スライムさんは、ぴゅっ! と逃げた。


「あ、こら!」


 私もスライムさんを追って、お店の外に出たけれど。

 一回止まる。


「えいむさん?」

 スライムさんが振り返った。


「逃げるなら、スライムさんがいない間に、万置きするぞー!」

「ひきょうですよえいむさん!」

「私が犯人だ!」

「どうどうと!」

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