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233 エイムと窒息

「こんにちは。あれ?」


 お店に入ると、カウンターの上にスライムさんがいた。

 こてん、と横になっている。

 近づいてよく見ると、眠っているようだ。


 紙があった。


  夢を見る薬。すぐ夢を見られて、すぐ目が覚めるけれど、目覚めはすっきり!


 横には、なにものっていない小皿がある。

 まさかここに書かれている薬を飲んだのだろうか。

 あやしく見えるけれど。


「スライムさん?」


 ちょっとゆらしてみても、起きない。

 すぐ目覚めるというけれど。

 どれくらいだろう。


 危険なものじゃないんだよね?


 紙をめくったり、文章をよく見たりしてみる。わからない。

 誰から買ったんだろう。


「スライムさん?」


 ちょっと呼びかけたり、つんつんしてみても、スライムさんは起きない。


「ううん……」

 でもちょっと声を出した。

 これなら、だいじょうぶそうかな?


 私は、壁際にある商品を見まわした。

 傾いている盾があった。

 スライムさんが起きる前に直しておこう。

 気づくだろうか。


 私はちょっと笑いながら、盾を縦にした。

 そのときだった。

 にゅるり、となにかがなめらかに出てくると、私の腕をするするとのぼってくる。

 タコだ。


 振り払おうとしても、にゅるり、にゅるりとなめらかに素早く、私をよじ登っていって、顔にくっついた。


「む、むー!」


 顔がおおわれ、口がふさがれる。

 スライムさん!

 でも呼びかけることもできない。


 息を止めるつもりじゃなかったから、すぐ苦しくなっていく。

 どうして、こんなところに、タコが……。



「はっ」

 目を開ける。


「えいむさん! どうでしたか!」

 スライムさんが、カウンターの上で、ぴょん、ととんだ。


「スライムさんが助けてくれたの!?」

 私はまわりを見る。

 椅子に座っていた。


「タコは?」

「たこですか?」

「そう。……あれ?」


 だんだん、意識がはっきりしてきた。


 そうだ。

 スライムさんと話をして、そんなにかんたんなら、夢を見てみよう、となったんだった。

 この薬は薬草からつくられたもので安全で、すぐに夢を見て、すぐ起きられる。

 だから安心!

 そういうものだった。


「たこの、ゆめをみたんですか?」

「うん。なんか、おそいかかってきたよ」

「たこがですか?」

「顔にくっついてきて、息ができなくなって、死にそうだった」

「あぶない!」

「スライムさんは助けてくれなかった」

「ええ!?」

「寝てたよ」

「ねてたなら、しょうがないですね。いくらぼくでも、ねてたら。はい」

 スライムさんは、自分を納得させるように言っていた。


 そして、カウンターの端にある本を読む。


「ふむふむ」

「どうしたの」

「ゆめの、しんだんです」

「夢の?」

「どうやら、いきができなくなるのは、いいゆめのようです!」

「そうなの?」

「せいちょうとか、そういうものです! よかったですね!」

「うん。じゃあ、スライムさんが寝てる夢は?」


「だれかが、ねてるゆめは……、あんまりですね。つかれてるとか、げんじつがいやとか。さいのうが、でてくるまえ、とかも、ありますけど」

「才能はいいね」

「はい!」

「あ、でも、スライムさんは、自分の夢じゃなくて、私の夢で寝てただけか。私の夢でスライムさんが寝てる場合は?」

「えいむさんのゆめで、ぼくが、ねてるゆめ……?」


 スライムさんは本を見る。


「ええと……。しょくば、とか、へやとか、そととか、ばしょによって、ちがうみたいですけど」

「ここって、なんだろう」

 よろず屋は、スライムさんの職場だし、友だちの部屋みたいなものだし、変わったものに囲まれている場所、ともいえるし……。


「あと、ぼく、ひとじゃないですけど」

「うん。あ、うん……。どうなるんだろうね」

「……」

「……」

「……ところで、そとであそびましょうか!」

「そうだね!」


 私たちは外に出た。

 草原に、雲間から差した光があたって丸く、明るくなっている。

 ちょっと夢みたいだった。

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