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230 スライムさんとマナー

 お店の外には低いテーブルが置いてあった。

 そこには、私の手のひらくらいの大きさの木の板と、水の入ったコップが置いてある。

 ナイフとフォークも。

 

 その前にはスライムさんがいた。

 ちょうど、近づいていくと目が合うように、スライムさんはテーブルの向こう側で待っている。


「いらっしゃいませ!」

「こんにちは?」

「まなーのおじかんです!」

 スライムさんは言った。


「マナー?」

「しょくじの、まなーです!」

「もしかして、その板は、肉とか?」

「よくおわかりで!」


 私は、あらためてテーブルの上を見た。


「ナイフとフォークのマナーとか、そういうこと?」

「そうです。そこでもんだいがあります」

「急だね」

「いつだって、もんだいは、ぼくらをまってくれないのです!」

「たしかに」

「ぼくは、たべるときのまなーは、どうしたらいいですか?」


 スライムさんは言った。


「どうおもいますか?」

「うーん」


 私は、スライムさんの前に置かれた、ステーキ役の板を見た。


「スライムさんが食べるときって、口だけで食べるんだよね」

「そうです!」

「それが、マナーの問題を、生むのではないかと思うんだよね?」

「そうです!」

「よし。私の結論を言おう」

「! はい!」

「……問題なし!」

「!?」


 スライムさんは、びくり、とふるえてから、私を見た。


「どういうことだね……?」

 スライムさんは、立場あるおじさんのような言い方をした。


「それはだね。スライムくん。君は、手足がない、ということだよ」

「くわしくきこう」

「手足がある人は、ナイフを持つ手や、置き方などに、マナーがかかわってくる。だが、手足がなければ……?」

「! まなーが、かんけいありません!」

 スライムさんは、勢いよく、ぷるぷるふるえた。


「私が思うに、もし、スライムさんに手足がたくさんあったら?」

「どうなるんですか? ごくり」

「もしかしたら、ナイフは、第一の手で持って、フォークは第二の手、コップは、第三の手でしか持ってはいけない。そして、口のふく布は、第四の手だけれども、そのときは、他の手ではなにも持ってはいけないとか、マナーにつぐマナーが、スライムさんを、がんじがらめにするのではないか」

「!!! マナーが、おしよせてくる!」


 私はうなずいた。

「だから、私は、手が二つしかないから、二つのマナーですむけれど」

「もしかして、ぼくは、まなーにかんしては……?」

「かなり、強いかもしれない」

「! マナーをたおす、そんざい……!?」

 スライムさんの問いに、私はうなずいた。


「もしかしたら」

「できないことは、ぶきにもなる……! まなーさいきょうは、ぼくです!」

 スライムさんは、ぴょん、ととんだ。


「でも、食事中にとんだら、マナー違反かもしれない」

「! さいきょうでは、ない……!?」

「食事中はおとなしく」

「おとなしく」

 スライムさんは口を結んだ。


「でも、お話は、いい」

「おはなしは、いい!」

「マナーは、いい感じにするためのものだから」

「わかりました! おおめにみてください!」

「いいでしょう!」

「えいむさんの、ふところのふかさ!」

「これもまた、マナー」

「まなー!!」

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