228 スライムさんと鏡遊び
「あれ?」
よろず屋の横に広がる草原。
建物の横あたり。
浮いている。
スライムさんが。
んん? と思って何度か見直したけれど、やっぱり浮いている。
どういうことだろう。
ふしぎに思って近づいていくと、急にスライムさんの横に誰か現れた。
私だ。
私?
「あっ。鏡かあ」
近くまで行くと、よくわかった。
私の身長くらいの高さの鏡が、裏庭の草原に立ててあった。そのうしろから、スライムさんが体を半分出しているのだ。
半分の体が、鏡と反射して、本当は半分しか見えていないのに、スライムさんの両側が見えているように錯覚してしまうのだ。
「どれどれ」
鏡の裏側にまわってみると、スライムさんは私のひざくらいの高さの足場に乗っていた。
足場は鏡で隠れているので、スライムさんが浮いているように見える、というわけだ。
「これを使ったんだね。すごい。よく思いついたね!」
「ふっふっふ。えいむさんも、やってみたいですか?」
「私? そっか、私もできるんだね」
「どうぞ!」
スライムさんは鏡の前に移動して、私は鏡の裏にまわる。
「鏡に反射させるから、ちょっと、ななめに立つんだね?」
「そうです!」
「こうかな」
私は鏡から、ちょっと顔を出した。
「えいむさん! かおが、こわいです!」
「そう?」
ちゃんと半分が出ていないから、ものすごく細い顔の人に見えているのかもしれない。
「もうちょっと出す?」
「えいむさんのかおが、ぶっ、ふふふふ」
スライムさんが、笑いをこらえながら体をふるわせている。
「こう?」
私は、顔を傾けた。
「えいむさん!! ぶふふふ!」
スライムさんが、目をまんまるにした。
「こう?」
逆側に傾けた。
「ぶふっ! えいむさんのかおが、ぶふふふふ!」
「そんなにおもしろい? 私も見たいなあ」
「ぶふふふ!」
スライムさんは、笑いをこらえようとしてしているみたいだけど、無理だった。
私のおもしろさは、スライムさんの意思を超越してしまっているようだ。
「体も出しちゃう」
左腕と左足を出す。
「ぶほっ! ばほっ!」
スライムさんが変な音を出しながら笑っている。
「それで、こう」
私は手足で、ゆっくり羽ばたくようにした。
隠れている足は地面に、出ている足が浮いているから、スライムさんといっしょで、私も浮かんで見えているだろう。
「! えいむさんが、おもしろいかおで、とんでる!」
「どうだどうだ」
私は台に上がりながら羽ばたいた。
「えいむさんが、さらにとんでる! おもしろいえいむさんが!」
「飛びエイムです!」
「とびえいむさん! まほうです!」
「実は私は、おもしろい顔で、魔法を使っていたのです」
「かがみじゃない……! ただただ、おもしろいえいむさん……!」
「以上です」
私が台からおりると、スライムさんが、うむ、と大きくうなずくように体を動かした。
「えいむさん。りっぱになりましたね……。これで、いつでも、かがみでおもしろいかおをして、おかねをかせいでいけますよ……!」
「ところでスライムさん。私、そんなにおもしろい顔?」
「おもしろいです! おかねをかせげます!」
「動きじゃなくて、顔だけで?」
「かおがおもしろいです! とても!」
「そっか。じゃあ、もうやらない」
「どうしてですか!!?」




