225 スライムさんと雨の名前
「雨、強くなってきたね」
よろず屋にいたら、雨が降ってきた。
外に出て遊ぼうか、などと話していたら、だんだん強まってきて、いまはすごい音で雨が降っている。
雨が天井に当たる音でうるさいくらいだ。
風がないからいいようなものの。
「なんですか?」
「雨が強くなってきたね!」
「そうですね!」
私たちの声も、ちょっと聞きにくいくらいになっていた。
「もうしばらく、雨宿りしててもいい!?」
「いいですよ!」
「ありがとう!」
「ぼくと、えいむさんの、なかじゃないですか!」
「それにしても、よく降るね!」
「そうですね! ……」
スライムさんは、ててて、とお店の入り口まで出ていった。
「どうしたの」
私もついていった。
外の雨は、地面でいくつも水たまりをつくっていた。そこに落ちた雨がたくさんしぶきをあげている。
それだけじゃなくて、落ちてくる途中の雨も、雨同士でぶつかっているんじゃないかと思うくらいだ。雨粒だけじゃなくて、霧のように、小さくなった水が舞っている。
「おおあめですね!」
「そうだね!」
「なにか、なまえを、つけたいですね!」
「名前? 雨に?」
「はい! このまえの、あめは、すごかったですね! というはなしをするとき、おもってました! このまえの、あめって、いつだっけ? と!」
「わかってなかったの?」
「わかっていたことと、わかっていなかったことと、どちらでもないことの、みっつです!」
「そうだね! たしかに、わかってなくても、なんとなく、話を合わせることって、あるもんね!」
「はい!」
雨の音がする。
「だから、あめに、なまえをつけておけば、いつのあめか、わかりやすい! そう、おもいました!」
「なるほどね! じゃあ、この雨は、なんていう名前?」
「うーん」
スライムさんは、じっと雨を見た。
「すごあめです!」
「すごあめかー」
「はい! だめですか?」
「私は別にいいけど」
「……わたしはいいけど、えいむはなんていうかな? ですか?」
「なにそれ?」
「では、どこに、ひっかかってますか?」
「すごい雨が降ったら、全部、すごあめになるのではないか、という不安」
「なるほど! わかりやすいです!」
スライムさんは、くるっとまわった。
「では、むらさき、にします」
「むらさき? どうして?」
「このまえ、むらさきになったことを、おもいだしたからです!」
スライムさんは、むん、と顔を突き出した。
「……なるほど。いいかもね」
「いいですか?」
「色で、統一したら、いろんな色にできて、きれいかも」
「なるほど! あめがあがったら、にじがでるからですね!?」
「えっと、そういうわけでは」
「さすがえいむさんです! これはみんなにいわなければ!」
スライムさんが出ていこうとしたので、つかまえた。
「つかまえた」
「つかまりました!」
「みんなに言うのは、もうちょっと、いろいろ、名前をつけるのを試してからにしよう」
「わかりました!」
スライムさんの声が私の体にひびいた。




