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218 風船スライムさん

「その薬草、なんか色が変じゃない?」

「だいじょうぶですよ! ちょっとむらさきになってるくらいです!」

「でも、やめておいたほうがいいんじゃないかなあ」

「へいきです! もぐり!」

 とスライムさんが食べてから、私は用事を思い出してちょっと家に帰った。


 そしてもどってくると。


「スライムさん……?」

「ふふふ。そうじちゅうですよ! ぼくだって、じぶんから、そうじをすることもあります!」

 スライムさんは、お店の天井を、ぞうきんでふいていた。


「どうなってるの……?」

「ぼくがそうじをするのが、そんなにおどろきですか?」

「ふくらんでない……?」


 スライムさんの体がぱんぱんにふくらんで、まんまるで、浮かんでいる。

 いつもは私の頭の大きさくらいの体だけれど、私の胴体がふくらんだくらいになっている。

 ふわふわ浮かんだスライムさんは、それを利用して天井をふいている。


「しってますか、えいむさん」

「なに?」

「てんじょうは……。いがいとよごれてるんです!」


 スライムさんは、びしっ、と言った。


「そっか、あんまり天井をふいたりしないもんね」

「はい!」

「そうじゃなくて、スライムさんはどうして浮いてるの?」

「うーん。さっき、やくそうをたべたら、ゆっくりふくらんできましたね……」

「あの紫の?」

「ちょっと、むらさきだっただけですよ、いやですねえ」

 スライムさんは笑った。


「おっとっと」

 私は、スライムさんが落とした、頭の上のぞうきんを拾う。

「ありがとうございます!」

 スライムさんが天井でふわふわしている。


「降りられる?」

「はい!」

 スライムさんは元気に返事をすると、うーん、うーん、とうなっている。

 天井にくっついたままだ。


「降りられない?」

「はい……」

 スライムさんは言った。


「そっか。え、ぞうきんはどうやってとったの?」

「そのへんに、ありました」

 スライムさんは天井のはしのほうを見た。


「そんなところに?」

「じゅんびは、たいせつです!」

「えっと。じゃあ、どうしようか」

「じゃあ、えいむさん、おそうじ、てつだってください! したのほうは、できないので!」

「そっち?」

「よこのほうが、いいですか?」

「そうじゃなくて、スライムさん、ずっとそのままだったら、まずいんじゃないの?」

「えいむさんがてつだってくれれば、へいきですよ」

「でも、外にも出られないでしょう?」

「えいむさんがてつだってくれれば、へいきですよ」

「手伝うって?」

「そうだ、そのひも。なげてください!」


 私は、カウンターの裏まで言って、落ちていたひもを持ってきた。

「これ?」

「はい!」

「はいっ」

 ひもを投げると、スライムさんが、はしっこをうまくくわえた。


「どうですか!」

「ああ、うん」

 私がくいっ、くいっ、とひもを引くと、スライムさんが、ふわ、ふわ、と近づく。


 私はするする引っぱった。

 スライムさんが前まで来たので、両腕でつかまえた。


「つかまえた」

「つかまりました!」

 手がまわらないくらいの大きさだ。

 大きくなっても、浮かんでしまうくらい軽いので、変な感じがする。


「じゃあ、ぼくが、したのそうじをしますか?」

「スライムさんは、たくましいねえ」

「へへへ」

 スライムさんは照れたように笑う。


「スライムさんは、なにか重りがあるといいのかな」

「おもりですか?」

「ちょうどいい重りを口に入れておけば、下に降りていられるかもしれない」

「なるほど!」

「口に入れてもなくならなくて、安心なものってなにかある?」

「あります! むいみな、まほうせきです!」

「無意味な魔法石?」

「なにもおこらない、いしです! ただただ、きれいです!」

「すごい商品がまだ眠っているんだね……!」

「はい!」

「どこにあるの?」

「おくの……」


 スライムさんはまたふわふわ浮かんだので、私は奥に行ってそれを探した。



「うーん」

 どこだろう。

 スライムさんに言われた箱はあったけれど、たくさんあって、しかも、うかつにさわってはいけないということなので、そっと開けて、色を見る。というのをくりかえした。


「かなり透明で、緑色で、様子を見てもピカピカ光ったりしない……」

 むずかしい。


「どうですか?」

「うーん。なかなか難しいね」

「そうですね! ぼくも、もう、くわしくは、どこかわかりませんので!」

「そっか。そっか?」


 スライムさんがいた。

 いつもの大きさだ。


「あれ? もどったの?」

「そうなんです。じかんは、すべてをかいけつします……」

「そうなんだ」

「しぼんでしまいました」

「本当だ」


 同じだと思ったけれど、すこししわしわになっている。


「しわしわだね」

「しわいむです」

「シワイム」

「はい。だから、もういっかい、たべたら、ぱんぱんの、ぼくにもどります!」

「食べないで、水をかけようよ。そうしたらしわが直ると思う」

「はい! めいあんです! じゃあ、そのまえに」

「食べないで」

「はい」

「うん」

「……」

「……」

 スライムさんが、ぴゅっ、と走り出した。


「食べる気でしょ!」

「ふふふ! たべいむです!」

「待てー!」

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