217 スライムさんとメンテナンス
「めんてなんす」
お店の入り口に、そう書いてある板が置いてあった。
「めんてなんす」
もう一回言ってみる。
「めんてなんす」
もう一回。あれ?
もう私は言ってないぞ? と振り返る。
「あ、スライムさん」
「ふっふっふ。はいごを、とられるとは、えいむさん。ぶようじんですよ!」
背後のスライムさんが言った。
「気をつける」
「はい!」
「それで、めんてなんすってなに?」
「これですか? これは、おやすみ、ということです」
「じゃあ、おやすみでいいんじゃないの?」
「おやすみは、おやすみですけど、めんてなんすのばあいは、なかのひとは、いそがしいです」
「どういうこと?」
「めんてなんすは、いったん、おみせをしめて、そのあいだに、しなものを、ならべたり、かたづけたり、するんです!」
「お店を閉めないとできない掃除とか?」
「そうです! だから、おきゃくさんにとっては、おなじですけど、おみせにとっては、ちがうんです!」
「そっか。わかった」
「わかってもらえてうれしいです」
スライムさんは満足そうだった。
「でも、わからないことがあるんだけど」
「なんですか?」
「スライムさんはどうしてここにいるの?」
めんてなんす、をしなければならないなら、ここにいるのは変な気がする。
「ふっふっふ。これも、しごとです」
「どういうこと?」
「めんてなんす、のばあい、おわったら、ぷれぜんとを、あげなければなりません」
「プレゼント?」
「はい。おまたせしてすみません、というきもちをこめて、ちょっとしたものを、あげます」
「そうなんだ。仕事してたのに、プレゼントまで?」
「そうです。こんかい、やくそうをあげようと、おもっています!」
「めんてなんすって、たいへんなんだね」
「はい……」
「おやすみ、にしたほうがいいんじゃない?」
「でも、おきゃくさんは、めんてなんす、のほうがうれしいですよね?」
「そうだね」
「だったらぼくは、めんてなんす、をえらびます! それが、ぼくの、てんちょうとしての、つとめです!」
スライムさんは堂々と言った。
「薬草は、どのお客さんにあげるの?」
「めんてなんすがおわって、すぐの、おきゃくさんです!」
「そう」
「なにか?」
「お客さんがすぐ来なかったら、おやすみ、と同じなんだよね?」
「そうです!」
私は思った。
「もしかして、めんてなんす、って、お客さんがいっぱいくるお店の制度なんじゃない?」
「どういうことです?」
「ここのよろず屋だったら、ふつうに、ちょっと休みますっていえば休めるでしょう? でも、大型でたくさん人がぎゅうぎゅうになるくらいのお店だったら、どうしても急に休まないといけなくなるかもしれない」
「はい」
「そういうときに、急なおやすみをして、そのおわびに、薬草をわたす、だったら、ちょうどよさそうじゃない?」
「なるほど! なんまんにんも、おきゃくさんがくるおみせは、たいへんですね!」
「何万人もは来ないんじゃない?」
「そうですか?」
「だって、何万人もお客さんが来たら大変だもん。相手ができないでしょう?」
「たしかに」
「薬草も、何万個もいるし」
「たしかに!」
「ね」
「では、これが、わびやくそうです」
お店を開けたスライムさんが、薬草をくれた。
「わびやくそう?」
「はい! おわびの、やくそうです!」食べてみる」
私は薬草を食べてみた。
スライムさんも食べている。
「お金を払って買う薬草もいいけど、無料の薬草もいいね!」
「はい!」
「ところで、中の掃除とか、したの?」
「……、……ひみつです!」
スライムさんは、にっこり笑った。




