216 スライムさんと流れ星
光が落ちた。
筋を引くような光だった。
「どうでしたか!」
スライムさんは、ぺ、と口の中の光る石を出してから、言った。
「光ってた」
「でしょう!」
スライムさんが光る石を口の中にふくむと、ちょうど、青く透き通った体が青い光で輝く。
その状態で、よろず屋の屋根の上から飛び降りると、とってもきれいだった。
「きれいだった」
「でしょう! これが、ながれぼしです」
「え?」
「おねがい、しますか?」
「流れ星ではないんじゃない?」
空に光るのを見たのだったら、流れ星だと思えたかもしれない。
「ちがいますか?」
「うん。ちょっと近いし」
「ながれぼしって、どこからですか?」
スライムさんは言った。
「どこから……?」
「おちてくれば、ながれぼしじゃないんですか?」
スライムさんは不思議そうにしている。
「たしかに……? でも、スライムさんは、星じゃないし……」
「どこからが、ほしですか?」
「え?」
「おおきさとか、きまってるんですか?」
「大きさ」
「はやさとかですか?」
「速さ」
「どのへんですか?」
「……わからない」
全然わからない。
「もしかしたら、決まりもないのかも……」
「ないんですか?」
「なんでも、いいのかも……」
「ごみでも、いいんですか?」
「光っていれば……」
「ええ!? ごみでも!?」
「ゴミでも」
空から落ちてきて、光ってさえいれば。
「スライムさんが、正解なのかも……」
「ぼくが、せいかいですか!」
「可能性は、ある」
「やりました!」
スライムさんは、ぺ、と出した光る石を、口に入れようとする。
「あ、ちょっと待って」
私は光る石を拾って、お店の裏の水場で洗ってきた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます! じゃあ、えいむさんは、すきなおねがいを、どうぞ!」
「うーん、ちょっと間に合わないかなあ」
「まにあわない……?」
「ほら、すぐ、落ちてきちゃうでしょう?」
屋根から落ちてくるのだから、あっという間だ。
「たしかに」
「もっと、時間が長ければね」
「じかんですか。……はっ」
「なにか思いついたの?」
「このいしを、なげれば、いいのでは!?」
スライムさんは、私が持っている石を見た。
「そうしたら、かんたんです」
「なるほど! 言われてみれば!」
スライムさんがわざわざ飛ばなくても、かんたんだ。
「ぼくも、きづきませんでした! こたえとは、じつは、いちばんちかくに、あるんですね……!」
「やってみよう!」
私は、ぽーん、と石を放り投げた。
「じぶんだけで、ひかれますように!」
スライムさんが大きな声で言った。
「えっ?」
「じぶんで、ひかれたら、かんたんです!」
「まだ光りたいの?」
「はい! こたえが、こたえとは、かぎらない。わかりますか、えいむさん……」
スライムさんが目を細めた。
「ん?」
「いまは、それで、いいですよ……」
「ありがとう?」
「ところで、えいむさん。なげた、いしは、どこですか?」
「え?」
スライムさんが気になって、よそ見をしてしまった。
「どこだろう」
「うーん」
スライムさんが、きょろきょろしながら進んだ。
「なくしちゃったかなあ」
草原の草にうもれてしまったのだろうか。
「でも、ぼくらには、ひつようないかもしれませんね……」
「え?」
「こころの、ひかるいしを、みつけたのですから……」
スライムさんは、遠くを見ながら言った。
そのスライムさんが、ぼんやり光っている。
「スライムさん、光ってるよ!」
「え? ねがいが、かなった!?」
スライムさんの流れ星は、完全に正解だった?
「……あ! スライムさんの下に石があるんだよ!」
スライムさんがどいてみると、その下に光る石があった。
「ほんとうです! さすがえいむさん!」
「へへ」
「じゃあ、もういっかいなげてください!」
「ええ?」
「ぼくが、ひかれるようになるまで!」
「そんなに!?」
「はい!」
「うーん、じゃあ、試してみよう!」
「はい!」




