214 スライムさんとしもやけ
「こんにちは」
「いらっしゃいませ!」
スライムさんは、しゅぱっ、とカウンターの上に乗る。
そしておりる。
「もうちょっと、はやくしますね!」
「そう?」
「おみせは、はやさが、だいじなので!」
「じゃあ、一回、しもやけの薬もらってからでもいい?」
私が言うと、スライムさんは、しゅぱっ、とカウンターに乗った。
「しもやけ?」
「ちょっと、痛いというか。早くぬりたいと思って」
「しもやけ……」
「知らない?」
「……、……しってます!」
「わたしは、あんまり、はっきり知らないんだけど」
「しりません!」
「手が、痛いような、かゆいような、そんな感じになるの。寒い日が続いたりすると、なるんだよ」
「……ほんとうですか?」
「本当だよ。どうして?」
「やけてるんですよね?」
スライムさんは不思議そうに私を見ていた。
「やけ?」
「しもがやけてます!」
「焼けてるんじゃないよ。だって、寒いんだから」
「じゃあ、どうしてしもやけっていうんですか?」
「どうしてだろう」
私は手を見た。
右手の中指の、手の甲側に、赤くなっているところがある。
さわっても痛いというか、かゆいというか。
「これがしもやけ」
スライムさんものぞきこんだ。
「うん」
「しもがやけてて、しもやけ。なら、てが、しも?」
「ちがうよ」
「よくやけてますね」
「やけてないよ」
「でもしもやけ」
「うん」
「……えいむさん。ほんとうに、やけてないとおもいますか?」
スライムさんは言った。
「どういうこと?」
「えいむさんは、しもやけが、できたしゅんかん。みましたか?」
「見てない」
「ということは、だれかが、こっそり、えいむさんのてを、やいたかのうせいがある……?」
「えっ」
私は手を見た。
「やけどじゃ、なさそうだけど」
「やけどじゃなくて、しもやけですよ!」
「なるほど?」
「とくしゅな、ひで、やかれたんです」
「こっそり?」
「はい」
「うーん」
私は指を見る。
「えいむさん。げんばは、みてないんですよね?」
「見てない」
「えいむさんは、しもやけ、というものについて、くわしくないんですよね?」
「詳しくない」
「しもやけは、しもやけ。そういうなまえですよね?」
「そういう名前。あ」
「なんですか?」
「しもやけは、ずっと、手袋をしてると、ならないとか」
「! やはり! いじょうのことを、ふまえますと」
スライムさんは、ぴょこ、ぴょこ、とカウンターの上を進む。
「しもやけは、だれかに、とくべつなひで、やかれた。そういうことが、よそくされます。はんにんは、だれかです!」
スライムさんは、びしっ、と私を見た。
「なんと」
「こんどから、しもやけの、はんにんを、しっかりみることを、おすすめします!」
「わかった」
「それがむずかしいなら、てぶくろで、まもってください!」
「わかった」
「では、つぎのじけんがあったら、よんでください」
スライムさんはカウンターからおりると、ゆっくり、お店の奥に消えていった。
しもやけの薬は?




