207 スライムさんと転校生
私はよろず屋の中に入らずに、入り口の横に向かう。
左手にお店の壁を見ながら、奥へ歩いていく。
いったん立ち止まって。
「ちこくちこくー!」
私は小走りで角に向かっていく。
そして角を曲がろうとしたとき。
「うわー!」
反対側から走ってきたスライムさんとぶつかった。
どしーん、と尻もちをつく。
「ちょっと、あぶないじゃないのー!」
私が記憶しておいた文句を言うと。
「いってーな。どこみてんだよ」
とスライムさん。
「ちょっと、どこさわってんのよ、変態ー!」
私は、私にのっかっているスライムさんを軽く突き飛ばして、走り出す。
小走りで、よろず屋のまわりを一周して、中に入る。
「まったく、ひどい目にあったわ。……え? 転校生が? どんな人だろう……」
私が言っていると、スライムさんがお店の中に入ってきた。
「こんにちは。すらいむです」
「あー、さっきの変態男!」
「あ! おまえ、さっきのらんぼうおんな!」
「なによ!」
「なんだよ!」
「え? 私のとなりの席!? 最悪ー!」
「おれだって」
「なによ! ふん!」
「ふん!」
「……」
「……はい! おわりです!」
スライムさんは言って、カウンターの上にぴょん、とあがった。
「これが仲良くなる方法なの?」
私はきいた。
「はい! これがいま、とかいで、いちばんはやっている、なかよくなるほうほうです!」
「そうなんだ。でも、なかがわるくなりそうだけど」
「たしかにそうですね」
「スライムさんもそう思う? おたがい、嫌いになってるよね? もっと、平和な出会いかたのほうがいいんじゃない?」
「ぼくもそうおもいます! なかよくなりたいのに、まるで、なぐりあいでも、はじまりかねない、かのうせいすら、ふくんでいるかのような、じょうきょうです!」
「そうだね」
可能性すら含んでいるかのような状況?
「でも、これをやると、なかよくなる、らしいです」
「そうなんだ。なんか大変そうだけど」
「おきにめさないですか? ほかにもありますよ」
「どんなの?」
「ええと……。じゃあ……。やだ、あんたなんかにきょうみないんだけど、っていってもらえますか?」
「え? うん。それだけでいい?」
「もっといろいろありますね……」
スライムさんは、目を閉じた。
それから開く。
ちょっとキリッとした顔をになった。
「おまえがえいむ?」
「え? うん」
「じゃ、おまえもつれてってやるよ。こいよ」
スライムさんがカウンターからおりてきて、私をぷに、とさわった。
いまだろうか。
「やだ。あんたなんかに興味ないんだけど」
するとスライムさんは、はっとしたように私を見てから、にやりとした。
「ふーん。おもしれえおんな」
と言った。
「……いじょうです!」
「……どういうこと?」
「いやがられると、よろこぶ、おとこです」
「なにそれ。特殊な人?」
「それが、とかいでは、いっぱんてきです」
「都会ってやっぱり、こことはちがうね」
「そうですね! ばかにされたり、けとばされて、よろこぶおとこもいるらしいです!」
「そんな人いる?」
「じょうしきてきにかんがえて、ぼくも、そんざいしないとおもいますけど、どうやら、ほんとうのようです」
「ふうん」
スライムさんがいつものようにしていたら、いいかげんなことを言って、スライムさんをだまそうとする人もいるかもしれない。
害がなければいいけれど。
「スライムさん、だまされないように、気をつけてね」
「はい? はい!」




