表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/425

205 スライムさんと名前

「いらっしゃいませ、ぺんたごんさん」

 私がお店に入ると、スライムさんはそんなことを言った。


「おや? 私はエイムだよ」

 ひさしぶりに名前がわからなくなってしまったんだろうか。


「ふふ」

「スライムさん、もしかしてわざとまちがえた?」

「ふふ」

「あー、いけないスライムさんだ」

「そうです。なまえは、きちんと、あつかいたいです」

 スライムさんは、きりっとした。


「なまえは、だいじですよね?」

「うん。そうだね」

「ぼくはついにきづいたんです!」

「おめでとう」

「そこでおもいました。なまえをよばれたとき、ちゃんとしたなまえのときだけ、へんじをしようと!」

 スライムさんは、私を見た。

 目の奥に固い決意を感じる。


「まちがえた名前のときは、返事をしない?」

「はい! それが、だいじにあつかう、ということです!」

「そっか。でも、スライムさんって呼んだときだけ返事してると思うけど」

 私もちゃんと呼んでるし、スライムさんが変なときに返事もしないような。


 スライムさんは、唇? をかむようにまきこんだ。

「でも、じつは、すらいむさん、ってよばれたっぽいな、とおもったときも、へんじしたことあるんです」

「そうなんだ」

「ぼくはだめなすらいむです……」

「そんなことないよ。話をしているとき、ちゃんと聞こえなくても、こう言ってるかもしれない、と思って話をすすめることあるもん」

「えいむさんもですか?」

「うん」

「じゃあ、えいむさんも、だめなえいむさんですね」

「そっか。私はだめなエイムだったのか……」

 衝撃の事実だった。


「きちんときこえていないなら、ききなおさないと、いけませんよ」

「はい。わかりました」

「これはいいえいむさんですね!」

「いまのは、いいエイム」

「はい」

「やったね!」

「はい! これから、だめなふたりとは、おさらばです!」

「そうだね!」

「じゃあ……。なまえよびの、くんれんに、つきあってくれますか?」

 スライムさんは言った。



 スライムさんはカウンターの上に、私はカウンターの前に置かれた椅子に座った。

「では、名前を呼びます」

「はい!」

「……スライムさん」

「はい!」

「スロイムさん」

「……」

「スライムくん」

「はい?」

「スレイムさん」

「ちょっといいですか」

 スライムさんは、きりっ、とこっちを見た。


「ん? なに?」

「すらいむくんって、どっちですかね」

「くん?」

「いつもよばれてないので」

「スライムさんは、スライムなんだから、スライムくんでも正解なんじゃない?」

「わかりました」

「じゃ、続けるね。スライム氏」

「はい?」

「スレームさん」

「ちょっといいですか」

 スライムさんは、きりっ、とこっちを見た。


「なに?」

「し、はどっちですかね」

「これも同じじゃない?」

「すらいむ、だから、へんじをする、ということですか?」

「うん」

「わかりました!」

「じゃあ続けるよ。スライムどん」

「はい?」

「セレイムさん」

「ちょっといいですか!」

 スライムさんは、ぴょん、ととんだ。


「どうしたの?」

「どうしてもこうしたもないですよ! えいむさん!」

「うん?」

「わざと、よびまちがえてますよね!」

「そういう練習でしょ?」

「くんとか、どんとか、しとか、そういうところじゃないんです! もっと、すらいむ、のところをやってください!」

「わかった」

「おねがいしますよ!」

 スライムさんは、ぷんすかしながらカウンターの上で自分の立ち位置を整えた。


「じゃあいくね」

「はい!」

「スライムぽん」

「こら! えいむどん!」

「おっ? やったな?」

「ふっふっふ! ぼくをおこらせると、こういうことになるんですよ、えいむし!」

「ミスタースライムめ!」

「おっ、えいむえいむ!」

「くりかえしたな!」

「えい!」

「へらしたな!」

「ふっふっふ!」

「スライムさん!」

「えいむさん!」

「はい!」

「はい!」

「よし!」

「よし!」


 私たちは一緒にきりっとして、にっ、と笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ