203 スライムさんとぐるぐる
「いらないもの、いりますか?」
スライムさんは言った。
「いらないんでしょ?」
「はい!」
「じゃあ、いらない、と見せかけて、一度見てみようかな」
「おっ! さすがえいむさん、ひとあじちがいますね!」
「ふふふ」
スライムさんが持ってきたのは、穴のあいた箱だった。
紙製だろうか。持ってみると軽い。
上の面が開いていて、それぞれの辺にべろん、と出ている短い面があった。閉じるとふたができそうだ。
でも、横に大きな穴があいている。
「もさもさの、かるいものがはいっていたんです」
「もさもさ?」
「よこにとびだしているものなので、まるいあなが、あいています」
「最初からあったんだね」
箱に入り切らないのか、それとも外に出しておく部分が重要なのか。
これだけでは、私には計り知れないものだ。
箱の大きさは。
「ちょうど私の頭にぴったり」
頭にかぶってみたら、本当にぴったり。
頭の大きさにもぴったりだし、ちょうど、私の目と鼻と口が穴から出ているので、外も見える。
「食事もできそう」
「ほんとうですね! これから、そのはこをかぶってくらすことも、かんがえられますね!」
「考えるだけ、考えてもいいけど」
「ごけんとうください!」
左右を見てみる。
首を動かすと、頭にすっぽりくっついているので箱も一緒に動く。箱が頭の一部になったみたいだった。
そこでふと、思いついた。
「スライムさん、見て見て」
私は、左を向いてから、ゆっくり右を向く。
箱がついてくるので私の頭がゆっくり回転していくのがよくわかるだろう。
ここでひと工夫。
頭はそのままだけど、手で箱をつかむと、箱だけ回転させていってみた。
「お? おお?」
スライムさんが声を出す。
私の頭はそのままだけど、スライムさんから見たら、私の頭が回っていくみたいに見えるだろう。
私は、暗い箱の中で、こっそり頭だけ正面を向く。
さらに、左を向く。
ゆっくり箱だけ回していくと、箱の穴が、左を向いている私のところに重なる。
穴と一緒に前を向くと……?
「えいむさんのかおが、いっしゅうしました!」
スライムさんが驚きの声をあげた。
「ふふ」
予定通り!
「すごい!」
「さらに……」
「さらに?」
私は同じようにして、もう一周する。
「お、お、おお!」
私が一周してみせると、スライムさんはぴょんぴょんとんだ。
「2しゅうしました! えいむさんが、2しゅう!」
「ふふふ」
「ま、まさか……?」
私はゆっくりと、右を向いていく。
「えいむさん、もう、これいじょうは……!」
「ふふふ」
「えいむさん、えいむさーん!」
「えいっ!」
私は箱を手早くまわすと、もう一周した。
「じゃん!」
「すごい! すごすぎる!」
「……うっ」
私はひざをついた。
「えいむさん!?」
「ちょっと、首を、回しすぎたかもしれない……」
「えいむさん!」
スライムさんが私にとびつくと、箱をぐいぐい押す。
「あっ、スライムさん」
「えい! えい!」
スライムさんが押してくるので、私は尻もちをついた。
そして視界が明るくなる。
箱が壊れてしまったようだ。
「えいむさん! くびを!」
スライムさんが私の方に乗って、ぐいぐい押してくる。
「スライムさん、だいじょうぶだよ」
「いけません! 3かい、3かいまわしてもどさないと、しにます!」
スライムさんが私の首をぐいぐい押してくる。
私がなんとか、箱の残がいを使って顔面一周トリックを説明するまで、スライムさんは私の首を回そう回そうと、必死だった。




