199 スライムさんとパワハラ
「えいむさん、ちょっと」
よろず屋に入ろうとしたら、スライムさんに呼び止められた。
「こんにちは」
「こんにちは! ……では、ちょっと」
「うん?」
私はスライムさんについてよろず屋の横を歩いていく。
すると。
「えいっ!」
よろず屋の角を曲がって裏に入ったとき、スライムさんが私にぶつかってきた。
「わっ」
「どうですかえいむさん!」
スライムさんがまた、ぶつかってきた。
どーん! と、ぷに、が同時にやってくるので、痛いというわけでもなく、痛くないというわけでもなく。
「えいむさん! えいむさん!」
「えっと。いったん、やめて」
「わかりました!」
スライムさんは離れた。
「どうして急にぶつかってきたの?」
「ぱわはらです!」
「パワハラ?」
「はい!」
スライムさんは、力強く言った。
「そうです! いま、おおきなまちでは、ぱわはらが、はやってるらしいです!」
「そうなんだ。どういうのが、パワハラなの?」
「はい! ちからづよく、ぶつかるのが、ぱわはらです!」
「どれくらいの強さ?」
「それは、きまってません!」
「決まってないの?」
「はい! ぱわはらは、それぞれ、ひとによって、ちがいます! ですから、ぼくのぱわはらもまた、えいむさんにとっては、ぱわはらでは、ないかもしれません」
「難しいんだね」
「はい! ぱわはらは、むずかしいです!」
「えいむさんも、ぱわはら、しますか?」
「私は、しなくていいかな」
「そうですか?」
「だって、よくわからないし」
「えいむさんがぱわはらだとおもったら、ぱわはら、ってきめていいんですよ!」
「じゃあ、これでも?」
私は指で、ぷに、とスライムさんを押した。
「あんまり、ちからのぶつかりあいじゃ、ないですね」
「じゃあパワハラじゃない?」
「ぼくはちがうとおもいます。でも、えいむさんがぱわはらだとおもうなら、ぱわはらです」
「誰か、パワハラがなんなのか、決める人はいないの?」
「そうだんして、きめます。でも、つねに、きじゅんは、うごいています」
「基準が?」
「きょう、ぱわはらでなかったものが、あした、ぱわはらかも、しれません」
「そうなんだ。難しいね」
「ぱわはらは、むずかしいです!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「ぱわはらは、そんなものはない、とおもうなら、ないですし、ある、とおもえばある。そういうものです」
「そうなんだ」
「あいまいで、うごきつづけ、ちからづよく、おそろしい。そういうものが、ぱわはらです」
「謎だね」
「はい!」
「でも、痛かったり、嫌だったりしなければ、パワハラがあってもいいよね」
「そうですね! いたかったり、いたくなければ!」
「うん。……パワハラー」
私はスライムさんをつんつんした。
「あっ、あっ、えいむさん!」
「パワハラー」
「つんつんぱわはら!」
「嫌?」
「……いやではない、です!」
「パワハラー」
「びみょうな、ぱわはら! さすがえいむさん!」
「パワハラー、パワハラー」
「うひゃあ!」




