197 スライムさんと二日目
よろず屋に入ると、スライムさんがなんだかぼうっと、壁のほうを見ていた。
「こんにちは?」
「……あ、いらっしゃいませ!」
スライムさんが目をぱちっ、とさせた。
「どうかした?」
「いいえ……。それはなんですか?」
私は、持ってきた手提げから、慎重に、カウンターに皿を置いた。
「煮物だけど、もしかして、スライムさんって食べるかなって」
「なんのにものですか! たべます!」
「にんじんと、じゃがいも。野菜のほうが好きそうだから」
「たべました!」
スライムさんはすでにもぐもぐとじゃがいもを食べていた。
「どう?」
「おいしいです!」
「よかった」
「あじが、しみてます!」
「二日目の煮物が、おいしいんだって。さっき私も食べてきたんだよ」
「ふつかめ」
スライムさんが、下を向いた。
「どうしたの?」
「ふつかめって、なんでしょうね……」
スライムさんは視線を上げて、遠くを見た。
「二日目は、二日目でしょ?」
「でも、ふつかめ。きょう、つくったら、ふつかめは、いつですか?」
「明日じゃない?」
「それなら、つくったひは、いちにちめですか?」
「うん」
「でも、いちにちめは、いちにち、たってませんし……」
「うん?」
私は考えた。
「たしかに、二日目は、まるごと一日かぞえるのに、一日目は、お昼からとか、夜からとか、中途半端だね?」
「そのとおりです!」
スライムさんの目に力がもどった。
そう言われると、そんな気もする。
「そもそも一日目って、たしかに、なにが一日目なんだろうって気もする」
一日目。
一日目。
「一日目」
「いちにちめ」
「一日後、なら、なんだかわかるよね」
「! わかります! いちにち、あとです!」
「作った日から、一日後なら」
「ぼくのかんかくでも、ぴったりです!」
「一日目ってなんだろうね」
「いちにちめ」
「一日目」
「いちにちめ」
一日。
目。
目?
どうして、目?
「うーん……」
「いちにちめ」
「一日目」
「いちにちめ」
「一日目。スライムさん、どうやったら」
「いちにちめ」
「一日目。ねえスライムさん、これってどう考えたら」
「いちにちめ」
「一日目」
「いちにちめ」
「一日目。私、むずかしくてわからな」
「いちにちめ」
「一日目」
「いちにちめ」
「一日目」
「いちにちめ」
「一日目」
「いちにちめ」
そうして、私たちは考えるのをやめた。




