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196 スライムさんと砂時計

「わっ」


 道を歩いていたら強い風がふいた。目にゴミが入ったようだった。


 私は目を閉じたままそっと手でこする。

 だいじょうぶそうかな、と目をぱちぱち。

 よし。


「わっ」


 また強い風が。

 でも今度は、直前に近くで葉っぱがこすれるような音がしたので間に合った。

 そっと目を開けても、いたくない。

 よし。


 まわりを見てみる。

 道の横に生えている草や、木の枝、葉っぱ。

 はなれたところにあるそういうものが、ゆれている。

 ゆれがだんだん近づいてきて。

 私は目を閉じた。


 びゅう! と強い風が私を押す。

 おっと、と一歩さがるほどだった。

 あぶないあぶない。


「あー……」


 はなれたところで変な声がした。

 あの声は。


 私は声のしたほうへと行ってみた。


 いつも曲がる道をまっすぐ、そこからゆるやかに下りながらよろず屋とは逆側に下っていく。


 スライムさんがいた。


「スライムさん」

「えいむさん!」

 

 スライムさんの前には、小箱が倒れていた。

 中の砂が道に流れ出ている。

 白い砂だ。


「こんにちは」

「こんにちは!」

「それは……、砂?」

「はい! まごうことなき、すなです! きれいなすながあったので、とってきました!」

「ふうん」


 この先に、そんな場所があるのだろうか。


「こぼしちゃったの?」

「はい……。さっきから、きゅうに、つよいかぜが……」

「あ、私も目にゴミ入った」

「だいじょうぶですか?」

「うん。じゃあ、これ、もどすね」


 私は手で、砂を集めて箱にもどしていった。

 土がまざらないように、できるだけ上の、砂だけをねらう。


「なんか、さらさらしてる気がする」

「でしょう!」

 スライムさんが、ぷに、と体を寄せてきた。


「ながすと、さらに、きれいでした!」

「流す?」

「みずみたいに、はこから、ながしてみると……?」


 スライムさんが言うので、私は、せっかく箱に入れた砂だけど、ちょっと、こぼれている砂の上に流してみた。


「あっ」

 キラキラと、水が光を浴びたみたいに光った。


「キラキラした」

「でしょう!」

 スライムさんがうれしそうに言う。


「きれいだね」

 私は細く、砂を下に流した。


「でしょう!」

「うん」

 ちょっと集めて、もう一回。


「あ、もういっかいやりましたね!」

「うん。だめ?」

「いいでしょう!」

「やった」

 キラキラと、砂が流れ落ちる。


 本当に水みたいに。

 キラキラ、キラキラ。


「なんだか、砂じゃないみたいだね」

「はい」

「きれいだね」

「はい!」

「もう一回」

「はい!」

「なにかに使えそうなくらい、きれいだね」

「はい! なににつかいますか?」

「……」

「……」

「……きれいだね!」

「はい!」


 私たちはそうして、強い風がふくまで、なにをしようとしていたか忘れて、しばらく砂を流し続けた。

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