192 スライムさんとわんこそば
「えいむさんは、がいしょくは、しますか?」
スライムさんは、カウンターの上に薬草を持ってきて、ふと、言った。
「外食?」
「はい」
「たまにするかなあ。町のレストランとか」
「どんなものをたべますか?」
「うーん。いろいろ。お肉とかが多いかな」
「わかります」
「スライムさんも食べるの?」
「ぼくは、おにくはたべませんよ!」
スライムさんは笑いながら言った。
「じゃあなにがわかったの?」
「せっかくでかける。そしたらおにく。そういうことですよね」
「うん。そういうこと」
「そういえば、おきゃくさんに、きをつかう、がいしょくのはなしを、きいたことがあります」
「気を遣う外食? どんなふうに?」
「ずっと、おもてなしをします」
「ふうん?」
スライムさんは、ぴょん、とカウンターから降りると、スープでも入れるような、でも小さめの器だった。
「これをもってください」
「うん」
私は左手にそれを持った。
スライムさんが、その横にやってくる。
「ここに、おみせのひとが、たいきします」
「うん」
「そして、めんを、いれます」
「めん? 長細い、めん?」
「そうです! そこは、めんの、おみせです!」
「めん屋さんね」
「あんまりめんやさん、とはいいませんね」
「言わないね」
「それで、おみせのひとは、うつわに、ちょっとだけ、めんをいれます」
「ちょっとしか、くれないんだね」
「それをたべます。ひとくちで、つるっと、たべてください」
「フォークを使ってもいいの?」
「ばんばんつかってください!」
スライムさんは、カウンターをぷにぷにしながら、バンバン! と言った。
「じゃあ、たべます」
私は、存在しないめんを、存在しないフォークで、つるっと食べた。
「もぐもぐ。まあまあですね」
「えいむさんは、からくちですね!」
「ふふふ。私はきびしいかもしれないよ?」
「みとめてもらえるよう、がんばります!」
「それで? どうするの?」
「ここからが、ほんばんです……!」
スライムさんが、にやりとした。
「たべおわったら、また、おみせのひとが、いれます」
「ひとくちじゃ、すくないもんね。また食べます」
私は食べた。
「すると、いれます」
「そんなにあるの?」
「おみせのひとは、うつわをたくさんよういして、まちかまえています!」
「そうなんだ。つるり」
私はめんを食べた。
「どうぞ!」
スライムさんが入れる。
「つるり」
私は食べる。
「どうぞ!」
スライムさんが入れる。
「つるり」
私は食べる。
「どうぞ!」
スライムさんが入れる。
「うーん。いつまで食べるの?」
「えいむさんが、いらなくなるまでです!」
スライムさんは言った。
「どういうこと?」
「おみせのひとは、ずっと、えいむさんの、よこにいます」
「ずっと?」
「はい! そして、からになったら、いれます」
「ずっと?」
「はい。そしてそこでは、たべればたべるほど、よろこばれます」
「たくさん売れたほうが、お店はうれしいもんね」
「おなじかかくでも、です」
「え?」
「このおみせは、ねだんがおなじところと、たべほうだいのところが、あります」
「それでもたくさん食べたらよろこばれるの?」
「そうです……」
「それじゃあ、たくさん食べる人だったら、お店がつぶれちゃうよ」
「ぎりぎりでやっています……」
「大変だね」
「おきゃくさまの、ためですから」
ずっと横にいて、食べ放題で、しかもよろこんでくれる。
「どうですか……?」
「おいしい!」
「おっ。からくちじゃ、なくなりました!」
「素直なエイムさんです」
「どんどんどうぞ!」
「うん! でも、おみせはだいじょうぶなの?」
「ぜつみょうな、かかくせっていをしているので、だいじょうぶです!」
「すごい!」
「はい!」
「スライムさんも見習わないとね」
「どうぞ」
スライムさんは聞いていないふりをしながら、存在しないめんを、私の器に入れた。
「はい」
「つるり」
「はい」
「つるり」
「はい」
「つるり」




