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190 スライムさんと土

「こんにちは……」


 私は、足音を立てないようによろず屋に入っていった。


「いらっしゃいませ……」

「わっ」


 入り口の壁のうらに、スライムさんがいた。


「気づかれたか」

「ふふ。はいごに、おきをつけください!」


 おっと、とスライムさんが転びそうになった。

 床に、ちょっと、木がとがったところがあった。


「これは。あとで、けずっておきましょう」

「足元に、お気をつけください」

「これはえいむさんに、いっぽんとられましたねえ。わっはっは」

「わっはっは?」


「さて、きょうもやくそうですね? よういしておきまし……。よういします」

 スライムさんは、ぴょん、とカウンターの上に乗った。


 そのスライムさんを見て、私は言う。


「今日は、薬草ではないのだ」

「えいむさんが、やくそうでは、ない……?」

「私は薬草じゃないけどね」

「ぼくもやくそうじゃないです!

「気が合うね」

「はい! ……おちゃでも、のみますか?」

「うん。ううん、ちょっと、大きめの袋を買いに来たんだけど」

「ふくろですか?」

「うん。腐葉土を入れるんだって。お母さんが」

「ふようど」


 スライムさんは動きを止めた。


「スライムさん?」

「……あー、はいはい、ふようどですね、ふようど」

「知ってる?」

「しってますしってます」

「私、ちゃんと知らなかったんだけど」

「じつはぼくも、はっきりとは……」

「だよね」


「腐葉土って、葉っぱとかを集めてくさらせると、土と、草の、中間みたいなものになるんだって」

「ちゅうかん!」

「植物の、栄養になるんだって」

「それはすごいですね! ……つちになるんですか?」

「うん」

「……」


 スライムさんは、ふらりと、お店を出ていった。


 外で、ぽん、ぽん、と軽くとんでいる。


「どうしたの?」

「つちって、なんですか?」

「えっ?」

「つち」

 スライムさんは私を見た。


「土は……。葉っぱとか、そういうのだって」

「ふうん」

「あと、虫とか、動物とかも、土になるんだって」

「つちに?」

「時間はかかるけど」

「そうなんですか」


 スライムさんは、じっと、土を見ていた。

「じゃあ、ぼくもですか?」

「え? ああ、うん、そうかな。私たちもなるみたい」

「つちに?」

「うん。死んじゃったら」

「そうなんですか。じゃあ……」


 スライムさんは、土に、ぺこり、とした。


「どうしたの?」

「せんぱいに、あいさつです」

「そっか。なるほど。じゃあ、私も」

 ぺこり。


「えいむさん、あいさつはいいですけど、せんぱいのうえに、のってますよ!」

「おっと。あれ、どこに行けばいいの」

「おみせに、はいってください!」

「スライムさんも!」

「はい!」


 私たちは、急いでお店に入った。


「あぶなかったね!」

「はい!」

「でも、お店は、せんぱいの上にのってるけど、いいの?」

「……」

「……」

「おみせなので!」

「そっか!」

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