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189 スライムさんと金メダル

「これはなに?」


 カウンターの上には、金色の、硬貨を大きくしたみたいなものがあった。

 近くに帯の輪があって、輪と金色のものは金具でつながっているようだった。


「きんめだるです」

「金メダル? 金のメダル?」

「これをもっているひとは、ちょうてんに、たてます!」

「頂点?」

「はい! あらゆるしょうぶに、かてるようになるものです!」

「それはすごい」

「はい! ぎゃくにいえば、これをもってないひとは」

「人は?」

「ちょうてんに、たてません!」


 私は、金メダルを見た。


「なんだか、大変なものだね」

「そうです!」

「どうやって使うの?」

「くびにかけておくと、どんなしょうぶでも、かてます!」

「じゃあ、かけてみようかな」

「えいむさん! ちょうてんに、ごきょうみが?」

「ふふ。わたし、頂点に興味がある女だったんだよ?」

「なんと! ではどうぞ! ぼくには、くびの、がいねんがないので!」


 私は帯を持って、首にかけてみた。

 思ったよりずっしりと感じた。


「これが金メダル……」

「おもいですか?」

「うん。なんだか、とてつもなく重みがあるね」

「そんなにおもいなら、おいてもいいですよ?」

「重さっていうより、重みだね。でも、持っていると、いい気分になる」

「それはよかったです!」


 うーん。

「せっかくだし、勝負でもする?」

「しょうぶ?」

「絶対勝てるんでしょ?」

「そうですね」

「せっかくだし、スライムさんが得意な勝負ってある?」

「うーん。ぷるぷるぷるぷるだったら、かてますね!」

「それはたぶん、私には無理な気がする」

「じゃあ、こいんの、うらおもて、あてです!」


 スライムさんはカウンターからおりると、硬貨をくわえてもどってきた。


「これを、こうします」

 カウンターの上で、スライムさんが体をひねりつつ口から離す。

 硬貨がくるくる回転した。


「お、うまい」

「はい! そして、こうです!」

 スライムさんは、ぷにゅ、と上から体で押しつぶした。


「さて、こいんが、かうんたーにおしつけられているほうは、うらとおもて、どっちでしょう!」

「上になってる方じゃなくて?」

「はい!」

「ふーん……」


 スライムさんの体が透けているので、表が見えている。

 スライムさんの目が、すー、と動く。

 硬貨を見ていた。


「裏、かな」

「うらですか!?」

「うん」

「じゃあ、ぼくは、おもてです」

「えっ?」

「さあ、どっちでしょう!」


 どっちでしょうと言われても。


「そのままでいいですか?」

「うん」

「では!」


 スライムさんが横にどいて、私は硬貨をめくった。


「あっ」

 表だ。


「これ、どっちも表だよ」

 表と、表しかない。


「あー、ざんねんでしたねー、えいむさん」

「そういえば」

 スライムさんが、なんだかこんな硬貨を持っていたような、持っていなかったような気がする。


「えいむさん。しょうぶとは、きびしい、ものなのじゃ……」

 スライムさんは、白いひげを生やした老師のような目をした。


「負けた……」

「このまけをうけいれて、より、おおきくなるのじゃ……」

「……スライムさん?」

「なんじゃ……」

「これ、首にかけたら、負けないんじゃなかったの?」

「……おや」

 老師からスライムさんにもどったスライムさんは、私がかけている金メダルを、まじまじと見た。


「ほっほっほ。まけというのは、かちでも、あるのじゃ……」

「どういうこと?」

「いま、まけても、それをこんごにいかすと、かち、になるのじゃ……」

「そっか。なるほどね」

「べんきょうになったかのう?」

「うん、なった! ありがとう」

「ほっほっほ。それが、きんめだるじゃ」


 スライム老師は、ほっほっほ、と笑っていた。

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