183 スライムさんとコップの水
よろず屋に入ると、カウンターの上に、透明のコップが置いてあった。
中には水が入っているみたいだ。
コップのまわりには、水がついている。ちょうど、水が入っている高さまで。
ということは、冷たい水なんだろう。
「ぼくは、はっけんをしてしまいました……」
いつの間にか、スライムさんは私のうしろにいた。
「あ、こんにちは」
「こんにちは!」
「それで、発見って?」
「はい」
スライムさんはカウンターにとびあがると、ぴこ……、ぴこ……、といったりきたりした。
「こっぷを、みてください」
「見てたよ」
「つめたいみずがあると、こっぷに、みずがつきますね?」
「うん」
「なぜだとおもいますか?」
「うーん?」
私は首をかしげた。
「そういうものかな、って思ってた」
「ぼくも、おもってました!」
「でも、それじゃいけなかったのかな?」
「そんなことないです! ただ……」
「ただ?」
「りゆうを、みつけてしまった、ぼくが、すごいだけですよ……」
スライムさんは、にやり、とした。
「たしかにすごい」
「ふっふっふ」
「すごすぎる」
「ふっふっふ!」
「さすがスライムさん!」
「ふっふっふ!! ふーっふっふっふ!」
のけぞったスライムさんは、カウンターの裏側におっこちた。
「スライムさん!?」
「へいきです!」
しゅたっ、とスライムさんが帰ってきた。
「いやあ、さすがぼくですね!」
「それで、なにを発見したの?」
「え? あ、つめたくなると、こっぷにみずがつく、りゆうですね!」
「そっかそっか。どうして?」
「それは……」
「うん」
「なかのみずが、でてきてるんです!」
「えっ?」
スライムさんは、私を見て、満足そうにした。
「わかりますよ、わかります。びっくりすると、そういう顔に、なってしまうんですよねえ」
「え? コップの水が?」
私は、ぬれたコップを持ってみた。
「中から出てきてるの?」
「はい!」
「でも、コップって、中から出ないようにするものじゃないの? だから、水を入れておけるわけだし……」
「えいむさん、おちついてください」
「うん」
「そこには、とくべつなりゆうが、あったんです!」
スライムさんが、びしっ、と止まった。
「びしっ」
口でも言った。
「とんねるこうかです!」
「トンネル効果?」
「そうです。ものというのは、ひやすと、こっぷでも、とおりぬける。そういうせいしつが、あるんです!」
「なんだって……」
でも、と私は考えてみる。
「そういえば、あったかいものだと、コップがぬれたりしない……」
「そのとおりです! あったかいと、とんねるこうかは、でません!」
「むしろ、湯気がでる……?」
「ぎゃく、とんねるこうかです」
「逆トンネル効果……!?」
「そうです」
「とんねるをぬける、ぎゃくは、ゆげです」
「湯気は、逆トンネル効果だったのか……」
「そうです!」
「これは、大発見だ……」
私が言うと、スライムさんが、ふふふ、と笑った。
「だから、ひやせばひやすほど、とおりぬけます!」
「そうなんだね。あ、でも……」
「なんですか?」
スライムさんは、うきうきと、ゆれている。
「冷やしたら、氷になっちゃうんじゃない?」
スライムさんが止まった。
「凍ったら、出てこないよねえ」
「……たしかに」
スライムさんは、重々しく言った。
「えいむさん……。さすがです……。ということは」
「ということは?」
「これは、とんねるこうかでは、ない……」
「え!? ちがうの?」
「おそらく……」
「そうなんだ。残念だね」
「はい……」
スライムさんは、ちょっとつぶれて平べったくなった。
「てっきり、とんねるこうかだと、おもったんですが……」
「でも、いろいろ思いつくのはすごいと思うよ」
「ほんとうですか……? なぐさめですか……?」
「本当」
「やりました!」
スライムさんは、ぴょん! ととびあがった。
「じゃあ、ぼくは、まだ、すごいことができるかもしれません!」
「うん! がんばって!」
「はい!」
スライムさんは、コップを見た。
「こんどは、ながれのほうこうで、かんがえてみます!」
「流れ?」
「はい! りゅうどうです!」
「流動?」
「みずは、ながれて、でてくるので!」
「なるほどね。……じゃあ、すごく流れるっていうことで、超流動とか、いいかもね」
「かっこいいですね! そのほうこうで、かんがえます!」
スライムさんは、にゅるるる、と流れるようにカウンターの上を移動した。
「ちょう! りゅう! どう!」
「おおー!」
「すごいでしょう!」
「うん!」
「ふっふっふ!」




