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177 スライムさんと逆刃刀

「こんにちは」

「いらっしゃいませ!」

「それなに?」


 よろず屋のカウンターでは、スライムさんが紙の束を見ていた。

 そこにはいろいろな絵がかいてある。


「これは、いろいろな、しょうひんを、かいてあるものです!」

「見本?」

「そうです! これをみてきめる、そういうことも、あるのです!」

「へえ」


 見てみると、武器やよろい、食べ物のようなものから、いろいろなものがのっている。


「いろいろあるねえ」

「これをみるだけでも、たのしいです!」

「そうだね。買うことばっかりが楽しいわけじゃないもんね」

「! それを、かみにかいて、おみせにはっておきましょう!」

「それはやめましょう」


 見ていくと、変わったものがあった。


「これ、なんだか、変わった剣だね」


 剣は、ゆるやかに反っていた。

 そして、刃だ。

 反っているので、前側、うしろ側、とわかれているように見える。

 一番変わっているのは、刃が、うしろ側についているように見えるのだ。


「なんだか、逆じゃない?」

「そうです!」


 スライムさんは、ぴょん、ととんだ。


「これは、さかばとうです!」

「さかばとう?」

「さかばけん、ともいいます」

「逆刃ってことか。逆なんだね」

「はい!」

「ふうん」


 私はもう一度、絵を見た。


「使いにくそうだね」

「そうですね! それが、いいらしいです!」

「それがいいの?」

「きりたくない、らしいです!」

「切りたくない! 剣を使ってるのに?」

「そうです! けんをつかっているのに!」


 私たちは見合った。


「世間には、いろんな人がいるね」

「そうですね」

「あ、でも、切りたくないなら、全然切れない剣にすればいいのにね」


 逆刃ということは、わざわざ、切ろうと思えば切れるようにしていることになる。

「ふつうの剣より、値段も高くなっちゃうよね」

「そうですねえ。きりたくないなら、ぜんぜんきれないほうが、おやすいですね」

「ちょっと切りたいのかなあ」

「きりたいけど、きりたくない! びみょうな、おんなごころですね!」

「これは女の人が買うの?」

「おとことか、おんなとか、ちいさなもんだいですよ!」

「たしかに?」


「でも、なにかいいことがあるんだよねえ。きっと」

「そうですねえ」

「なんだろう」


 そのとき、紙が一枚、するりと落ちそうになった。

 ぱっ、と私は手でおさえた。


「えいむさん、いいうごきですね!」

「ふふ。さすがでしょう」

「はい!」


 剣を見る。

「もしかして」

「なにかわかりましたか!」

「剣とか持ってる人って、旅をしたりするよねえ」

「そうですね」

「旅といえば……。食べ物とか、必要だよね」

「はい!」

「ほら」


 私は、近くにある棒を持った。

 ちょうどすこし反っている。


「これを、こう持つでしょ」

 刃じゃない部分を上に持った。

 そうすると、刃は下にくる。


 棒の先をカウンターにくっつけた。

「こうすると、剣は、ずれにくくなるよね」

「そうですね」

「そして、こうする」

 手元をおろす。


「こうすると、刃先が動かないで、刃をおろせるでしょ」

「はい」

「もしかして、戦うのが得意でも、料理が苦手は人も多いんじゃないかなあ。でもこの切り方をすれば、動かないで、とんとんとん、って切れると思うんだよね。それに、平らなところで料理ができるとはかぎらないでしょう? ななめなところで、食材をおさえて、剣もおさえたら、切りにくいと思うの」

「なるほど! りょうりようだったんですね!」

 スライムさんがぴょん、ととんだ。


「もしかしたら、だけど」

「これはまちがいないです! さかばけんは、りょうりよう。さかばけんじゃなくて、りょうりけん、としたほうが、いいかもしれませんね!」

「料理剣。いいね」

「はい!」

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