167 スライムさんと広告
外を歩いていたら、なんだか変な格好をした人が歩いていた。
近づいてくる。その男の人は、鎧を身に着けているみたいだ。
でも、銀色の金属の部分は見えない。白くぬられた鎧で、そこに、赤や、黒や、黄色でいろいろ字や、模様が描かれていた。
他人をあまりじろじろ見てはいけない、と思ったので、すれちがいざま、ちらちらと私は見た。
なんだったんだろう。
私は振り返って、その人が遠ざかっていくのを見た。
「ということがあったの」
私はそのままよろず屋に行って、スライムさんに話した。
するとスライムさんは。
「なるほど」
と冷静なものだ。
「あれ? びっくりしない?」
「ふっふっふ」
スライムさんが笑う。
「あれを、ごらんください」
スライムさんが示したのは、私のうしろ、入口側の壁だった。
そこには。
「あっ。あれだよ、私が見たの」
鎧が飾られていた。
木でできた、人の体に似た土台の上に、鎧が着せられている。
その鎧は、下地が白くぬられていて、そこに文字や、絵が。
「道具屋? 宝石店?」
お店の名前が書いてあるのが見えた。
「そうなんです! これは、せんでんです!」
「せんでん?」
「よろいに、いろいろなおみせの、なまえをかいて、ていきょうしているのです!」
「ふうん?」
私は鎧をもう一度見た。
「それが、なんなの?」
「ふっふっふ。そうすると、よろいをきたひとがあるいているだけで、せんでんしていることになります」
「なるほど! うーん、つまり?」
「どういうことだとおもいますか?」
「あっ。宣伝してくれる代わりに、安く、鎧を売るの?」
「そのとおり!」
スライムさんが、ぎゅるるるっ、と回転しながらとびあがり、カウンターに着地した。
「おみせのひとたちは、せんでんしてもらい、おきゃくさんは、おやすくかえる。これは……。のびしろですね!?」
「お得だね」
「それです!」
「これはスライムさんが考えたの?」
「ふっふっふ。それはいえません!」
「なるほどね!」
「はい! しかも、このよろいは……。むりょうです!」
「無料!」
「はい!」
「じゃあ、みんな欲しくなっちゃうよ!」
「はい! ほかのよろいも、つくられるよていです!」
「だいにんきだね!」
「はい!」
そうして翌日。
スライムさんは、なんだかがっかりした様子でお店の前にいた。
「スライムさん、こんにちは」
「えいむさん。こんにちは……」
「どうしたの?」
「じつは」
お店に入ると、鎧がふたつになっていた。
昨日の、新品の鎧と、一部が大きくへこんでしまった鎧だ。
「へんぴんです……」
「返品」
「よろいは、まがると、せんでんこうかが、なくなってしまうので……」
「なるほど。だから中止になっちゃったんだね」
「はい……」
「その人は、お金を払ったの?」
「むりょうですので、はらいませんよ?」
「じゃあ、今度からは払ってもらったら?」
「どういうことですか?」
「きれいに、毎日着てたら無料にしてもらえばいいんじゃない? それで、着てなくてもいいけど、着なかった日の分は、あとからお金をもらうとか。修理代も無料とか。調整しようよ」
「……なるほど」
スライムさんは、遠い目をした。
「スライムさん」
「なんですか?」
「いま、めんどうだな、って思ってるでしょ?」
「どどどうしてわかったんですか!」
「この売り方は、面倒だし、他のお店にゆずりたいでしょ?」
「どうしてわかったんですか!?」
「じゃあ、ゆずろうか」
「はい!」




