165 スライムさんと吸血鬼
「よいしょ、よいしょ」
よろず屋の前で、スライムさんがなにかを押している。
大きな箱のようだ。
近づいてみるとスライムさんの前には、細長い箱があった。
十字が書いてあるのが、上なんだろうか。一番上のところがすこし細くなっている。また、下側に向かっても、だんだん細くなっている。六角形だ。
でもそれほどはっきり六角形というわけではなく、離れて見たら普通の四角。
ちょっとだけの、細長六角形だ。
「はっ。えいむさん!」
スライムさんが振り返った。
「エイムだよ」
「ぼくに、きづかれずにちかづくとは……。やりますね!」
「エイムは、やるよ」
「なるほど、ね」
スライムさんが、にやりとした。
「ところで、なにしてるの?」
「これを、かたづけようとしています!」
スライムさんは、箱の上に乗った。
「この箱はどうしたの?」
「かったんですけど、おもったものと、ちがうものがきてしまった……」
「そうなの?」
「はい!」
「なかに、はいれて、ろっかくけいの、はこ、というちゅうもんをだしたら、このけっかです」
「中に入れて六角形?」
「はい! はこを、みにきたえいむさんに、どーん! ととびだして、おどろかせる、けいかくだったのです! しかくより、ろっかくけいのほうが、まろやかで、はいりやすいと、おもったんですが」
「まろやか」
「はい!」
「中に入れる箱って言ったら、スライムさんじゃなくて、人が入れるくらいの箱が来ちゃったんだね」
「はい!」
「そして、いけない計画が明らかになった」
「はっ!」
スライムさんは、びくっ、とした。
「……まあ、いいでしょう。これは、むすうにあるけいかくの、ほんの、ひとつ……」
スライムさんが、小声で言った。
「そうだったのか」
「はい!」
「じゃあ、計画を解き明かしたお祝いに、片づけるのを手伝うかな」
「えいむさん! ふとっぱらですね!」
「ふふふ」
これからは、太っ腹のエイムと呼んでもらおう、と言いかけたけど、なんだか嫌な感じがしたのでやめた。
「この箱は、どうするの?」
「いったん、しまいます!」
「そう」
じゃあ、と箱の端を持ち上げてみようとしたら、片側だけでも、重くて持ち上がらない。
「重い!」
「でしょう!」
スライムさんは、なんだか、ほこらしげだった。
「中になにか、入ってるの?」
「10けつき、がはいってるとか、はいってないとか」
「10けつきって?」
「さあ……」
「ふうん。それが重いのかな。開けてみる?」
「そうですね!
「鍵とかは、ないのかな?」
箱のまわりを調べてみる。
片側は、金具がつけられていてもう片方は、指がかけられるところがある。
「こっち側は閉じてて、こっち側が開くみたいだね」
「はい!」
「私が開けていい?」
「おねがいします!」
「よいしょっと」
指がかかって、力を入れると、ゆっくり箱が開いていった。
中に入っているものが見えてくる。
服……?
すると。
「うわあー!」
スライムさんが急に大きな声をあげたので、私はびっくりして手を離してしまった。
最後に力が入ってふたを思いっきり開いてしまい、私は反対に転んで尻もちをついてしまった。
「いたた」
「だいじょうぶですか!」
スライムさんがぴょこぴょこ近づいてきて、私のまわりを見ていった。
「えいむさん……、あしは、ちゃんと、ありますね……。ても、あります!」
「よかった」
「はい! だいじょうぶですか!」
「うん。スライムさんが急に大きい声を出すから、びっくりしちゃった」
「え?」
スライムさんは、ふしぎそうに私を見る。
「おおごえをだしたのは、えいむさんじゃ、なかったんですか?」
「え? 私じゃないよ」
私たちは、すこし見合った。
そう言われると、スライムさんの声とはちょっとちがっていたような気もする。
立ち上がって、中を見た。
「なにこれ」
砂がたくさん入っていて、砂に半分うもれるようにして、洋服があった。
男の人の服だ。
黒い服で、シャツだけ白い。
「すなですね」
スライムさんが、箱の縁に、ちょこんと乗った。
「砂と、服だよね」
「はい!」
「これが10けつき?」
「そうだとおもいますけど、ぼくは、しらないのです!」
「そうだよね」
なにかのまちがいなんだろうか。
それとも、砂の中になにかがある?
この服は、砂の中に入れておかなければならない?
結局、砂を全部捨てても、服があるだけだった。
「なんだったんだろうね」
「すなが、きちょうひん、だったんですかね」
「そうかもね」
いちおう、箱をお店の奥に移してから、砂を、もどせるだけもどしておいた。




