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164 スライムさんと無限薬草

 よろず屋に入ると、なんだか、いいにおいがした。

 香ばしいというか、食欲をそそるというか。


「へいらっしゃい!」

 とカウンターからスライムさんが言う。


「こんにちは」

「へいえいむさん! きょうは、なににしやすか!」

 スライムさんが、いせいよく、声を出している。


「スライムさん?」

「いいやくそうが、はいってますよ! むげんやくそうは、どうですか!」

「無限薬草?」

「へい、むげんやくそう、いっちょう!」

 スライムさんはちょっと横に動くと、へい、無限薬草一丁! とくりかえした。


「へい!」

 そして、皿に、炒めた薬草が盛りつけられたものが出てきた。


「いいにおい」

 香ばしいにおいの正体は、これだったようだ。

「うまいぜ!」

 と、スライムさんがフォークを出してくれた。


 食べてみる。


「あ、おいしい」

 薬草をしょっぱい感じの味付けにしてある。

 他にも、ちょっと、なにか入っている。


「これは、肉?」

「さかなだい! うみのやつだい!」

「へえ。おいしいよ」

「よかったです! あ、らっしゃい!」

 スライムさんは言い直した。


「スライムさんが作ったの?」

「ふっふっふ。じつは、そうだい!」

「へえ。料理得意なんだね」

「ふっふっふ。ふっふっふ! じつは、かんたんに、できるんだい!」


 スライムさんは、待ってました、とでもいうように、くるっとまわった。


「これは、あっというまに、できるんだい!」

「ふうん?」

「このはこを、つかえば!」


 スライムさんはカウンターのうしろから、ずるずると、箱を押してきた。

 スライムさんよりも小さな箱で、上が開くようになっている。


「ここに、やくそうと、しょうしょうのさかなと、あじつけのやつを、いれます」

「ふむふむ」

「そして、なかに、ひのまほうせきをいれて、ふたをして、かきまぜたら、なんと、できあがりなんだい!」

 スライムさんは、びしっ、と私を見た。


「かんたんだね」

「そうでしょう! だれでも、かんたん、おいしいぜ!」

「ちなみに、火の魔法石っていくら?」

「1まん……。あ、1ごーるどです……」

 スライムさんは、目をそらした。


「スライムさん! あなたはいま、うそをついた!」

「ぎくっ!」

「高すぎて売れないと気づいて、うそをつきましたね!」

「ぎくぎくっ!」

「1ゴールドで、買えませんね!」

「ぎくぎくぎくっ!」


 スライムさんは、ぱたり、と倒れた。


「えいむさん……。ぼくの、まけです……」

「スライムさん……」

 私は、スライムさんに、ぽんぽん、と手をそえた。


「えいむさん……?」

「まちがえたら、また、立ち上がればいいんだよ」

「えいむさん……」

「さあ、立ち上がろう!」

「はい!」

「いっしょに、たべよう!」

「はい!」


 いっしょに食べながら、私は、ふと思った。


「スライムさん」

「なんでふか?」

「これって、薬草と、味付けの材料だけを商品にして、これに魚を足して炒めてください、ってお店にならべておいたら、いいんじゃない?」

「!!」



 次の日からそれを置いておいたら、薬草と一緒に買っていくお客さんが、何人かいたということだった。

 たくさんはいないけれど、買っていく人が途切れることはなかったらしい。



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