161 スライムさんと意味深ズーム
スライムさんが、よろず屋の近くに出てきていた。
なにをしているんだろう。
スライムさんが、草の上に置いてある石ころにゆっくり近づいていく。
離れていく。
「うーむ」
とひとこと。
今度は、咲いている、小さな白い花に近づいていく。
離れていく。
「うーむ」
とひとこと。
なにをしているんだろう。
「スライムさん」
「あ、えいむさん。こんにちは」
「こんにちは。ねえ、なにしてるの?」
「ふふ、えいむさん、きづいてしまいましたか」
「ふふ、気づいてしまった」
スライムさんは、きょろきょろと左右を見た。
「じつは、ちかづくと、いみしんになる、ということにきづいてしまったんです!」
スライムさんは言った。
「意味深?」
「そうです! たとえば、えいむさん。ちょっと、うしろをむいてください」
「いいよ」
「あ、ほんとうにむかなくていいです」
「うん?」
「そうですねえ。まずは、これに、ゆっくりちかづいてください!」
スライムさんは、石ころを軽く押した。
「石に?」
私は、しゃがんで石を見た。
「そういうかんじです! では、ほんばんです!」
「うん?」
「まず、ぼくのうしろすがたをみます」
「うん」
「それから、いしに、をみます」
「うん」
「どうぞ!」
私は、うしろを見たスライムさんを見た。
それからゆっくりしゃがんで、石を見る。
「どうですか!」
「どうって、どう?」
「なにか、いみしんでしょう!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「意味深……。つまり、うしろを向いたスライムさんに、この石を投げる、ってこと?」
「あぶない! でも、たとえば、そのような、いみを、かんじませんか?」
「うーん? もうちょっと詳しく」
「わかりました」
スライムさんは、ぴょこぴょこと、花の前に行った。
「まず、うしろをむいている、えいむさん」
「はい」
「そして、はな」
「はい」
「このじゅんばんで、みているひとがいたとしたら、きっと、えいむさんに、はなを、あげようとしていますよね?」
「ははあ……」
私はうなずいた。
「スライムさんは、誰かの視線を想像して、その意味をつくって、遊んでるんだね?」
「そのとおりです! さすがえいむさん!」
スライムさんは私のまわりを一周した。
「えいむさんも、いみしん、やってください!」
「意味深ねえ……。じゃあ」
「はい!」
「まず、お店に入ります」
「はい!」
私たちは一緒にお店に入った。
「それから、スライムさんの横顔を見ます」
「はい!」
「そして、カウンターの中の、薬草に、近づきます」
「はい!」
「これで、スライムさんは、薬草が食べたいんだろうな、買ってあげようかな、となります」
「そのとおりです!」
スライムさんは、カウンターの上にとびのった。
「よくわかりましたね、えいむさん……。もう、おしえることは、ありませんよ……」
「じゃあ、スライムさんに薬草を買ってあげようかな」
「えっ」
スライムさんが、目を大きく開いた。
「これは、いみしんの、せかいですよ!」
「でも、ほしいでしょ?」
「はい!」
「スライムさんには、よく、薬草をもらってるし」
「それは、うりものではない、やつですので!」
「だからたまには、売り物を食べていいよ。買ってあげる」
「え! じゃ、じゃあ、ぼくも、うりものをあげます!」
「だめだよ。売り物なんだから」
「うりものは、あげられない……? うりものだから……? あげものじゃないから……?」
「揚げ物?」
「これが、ぼくの、げんかい……」
「じゃあ、薬草ひとつください」
「はい!」
私は、スライムさんにもらった薬草を、そのままスライムさんにあげた。
「はい」
「……」
スライムさんは、それをじっと見ながら、近づいていった。
「どんないみしんか、わかりますか?」
「うーん。半分ずつ食べようと思ってるか、ひとりじめしょうとしてるか」
「どっちかです!」
「どっちかなあ」
「どっちかです!」
「どっちかなあ」
「どっちかです!」
「……どっちかなあ」
「えいむさん、わかってますね!?」




