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160 スライムさんとよろず屋よろず屋

「これはなに?」


 お店の、カウンターの近くに、木箱がならんでいた。


 8つ、四角をつくるようにならんでいて、中心があいている。

 そこに、スライムさんが入った。

 ちょうどすっぽりおさまる大きさだ。


「ふっふっふ」

 スライムさんが笑う。


「ふっふっふ」

 私も笑ってみた。

「えいむさんは、わらわないでいいです!」

「わかった」

「これはなんだと思いますか?」


 私はよく見る。


「箱がまわりにあって、スライムさんが中心にいる」

「そうです!」

「うーん。家とか?」

「おしいです!」

「じゃあ……。家かな」

「いま、いいましたよ!」

「そっか。なんだろう。もしかして、家?」

「えいむさん!」

「ふふふ」


 私はもう一度よく見た。


「なんか、カウンターみたいだね」

「! いいですね! ほとんどせいかいですよ!」

「え? よろず屋?」

「せいかいです!」

 スライムさんが、ぴょーん、ととびだした。


「このはこを、あけてみてください」

「おっ。薬草だ」

 箱のひとつには、薬草がすこし入っていた。


「うりものが、はいっています!」

「なるほど。よろず屋だ」

「ぼくはきのう、おもったんです。よろずやには、いろいろなものがある。でも、このおみせには、ないものがある、と」

「なに?」

「よろずやです!」

 スライムさんが、きりっ!


「どういうこと?」

「このよろずやには、よろずやが、うってませんでした! だから、しょうひんに、よろずや、をおきました!」

「なるほど?」


 私はならんでいる箱を見た。


「よろず屋には、よろず屋もあってこそ、よろず屋ってこと?」

「そうです!」

「なるほどねえ。じゃあ、スライムさんは、この中にいるの?」

「いません」

「えっ」

「ぼくは、こっちです」

 スライムさんは、いつものカウンターにとびのった。


「ここにいないと、よろずやの、てんちょうに、なれませんよ!」

「そっか。じゃあ、こっちは?」

「えいむさんです」

「私?」

「えいむてんちょう、おねがいします」

「はい」


 私は、よいしょ、と木箱の間に立った。


「これでいいの?」

「りっぱなものです」

「いらっしゃいませ。本日は、薬草が大変お買い得ですよ」

「おおー! これでえいむさんも、りっぱな、てんちょうです!」

「そう?」

「はい!」


 スライムさんが、大きくなって、と何度もうなずいていた。


「これで、かんぺきです!」

「でも、本当にいいのかな?」

「どういうことですか?」

「だって、この、私のよろず屋に、よろず屋が売ってないよ」

「えっ」

 スライムさんは、ぴたりと止まった。


「このよろず屋にも、よろず屋がないと」

「でも、それは……」

「私のよろず屋は、よろず屋が売ってないよろず屋でもいいの?」

「いけません!」

「じゃあ、どうしたらいいの?」

「うーん」

 スライムさんは、ぴょこぴょこ、カウンターの上を、行ったり来たりした。


 そして止まった。


「えいむさんの、おかあさんに、おねがいします!」

「私の?」

「そうすれば、かんぺきです!」

 スライムさんは、きりっ!


「じゃあ、お母さんのよろず屋は、よろず屋を売ってなくてもいいの?」

「ふっふっふ。そういうとおもってましたよ!」

「スライムさん?」

「えいむさんの、おとうさんに、おねがいすればいいんです!」

 スライムさんが、きりっ!


「なるほどね」

「ふっふっふ。ふっふっふ!」

「じゃあ、お父さんのよろず屋は?」

「ちょうちょうさんに、こえをかけましょう!」

「なるほどね!」


 するとスライムさんが、急に困ったような顔になった。

「どうしましょう……」

「どうしたの?」


「……えいむさん。これをつづけていくと、どうなるとおもいますか?」

「うーん?」

「せかいじゅうのひとが、よろずやになるんでしょうか」

「あ、そうかもね!」

「そうなったら、みんなよろずやだから……。おきゃくさんが、いませんよ」

「そうだね」

「よろずやがかんせいすると、おきゃくさんが、いなくなる……?」


 スライムさんは、ごろり、とカウンターに寝転がった。


「スライムさん?」

「よろずやのかんせいは、よろずやには、いらないんですね」

「そうなのかな」

「えいむさんはどう、おもいますか?」

 スライムさんは言った。


 私は、小さいよろず屋から出た。


「スライムさんも入ってみて」

「? はい」

 スライムさんは、カウンターからおりて、小さいよろず屋に入った。


「どう?」

「わるくないですね!」


 私はカウンターの中に入った。


「じゃ、これは私のよろず屋」

「えっ」

「私のよろず屋は、よろず屋の中によろず屋がなくても、いいことにする」

「ずるいですよ!」

 スライムさんは、ぴょーん、ととびだした。


「ぼくのよろずやです!」

「スライムさんのよろず屋も、よろず屋の中によろず屋がなくてもいいことにする?」

「えっと。……きょうは、いいことにします!」

「そうきたか」

「はい!」


 私たちは、うん、うん、とうなずいた。

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