154 スライムさんと召喚獣
「えいむさん、ちょっと、じめんにかいてほしいものが、あるんですけど」
よろず屋さんに行ったらスライムさんがそんなことを言うので、私はそれを書くことになった。
「どうぞ!」
スライムさんにわたされた一枚の紙には、絵のような、字のようなものが書いてあった。
円の中に、直径が小さくて中心が同じ円が二つある。それぞれの、すきまのところには、円の間を一周するように字や模様のようなものがならんでいた。
「これを、棒で地面に書けばいいの?」
「はい!」
「でも、複雑だから、ちゃんとかけるかわからないよ?」
「できるかぎりでいいです!」
「わかった」
私は、できるかぎりで書いていく。
ちょっとななめになったり、鳥の絵が鳥じゃないように見えるようになったりもしたけど。
「これでいいかなあ」
「はい!」
「あ、目がすくないかも」
私は、三つ目がある犬のようなものに、点をひとつ足した。
「かんぺきです!」
「だいぶ、完璧から遠い気がするけど」
「では、はじめますよ!」
スライムさんは、お店に行くと、頭になにかのせてもどってきた。
赤い、透き通った石だ。
それを、私が書いた図形の中心に置いて、離れた。
すると図形が光り始める。
「なにこれ」
と私が言っている間に、図形から、上に向かって光が吹き出した。
「うわー」
「しょうかんの、ぎしきです」
「召喚?」
「しょうかんじゅうが、でてきます!」
「召喚獣?」
「こんかいは、かんたんしょうかんじゅうせっと、です! なにがでてくるか、わくわくしますね!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
わくわくするというか……。
「なにが出てくるか、わからないの?」
「はい、だいたいです!」
「だいじょうぶ?」
「なにがですか?」
「私たちを、食べちゃったりとか」
「だいじょうぶです! ちゃんと、ぼくのいうことをきく、ちいさめの、とり、のはずです!」
「そう。でもそれって、ちゃんとさっきの図が書けた場合だよね? まちがってても平気なのかな」
「えっ」
「えっ」
私たちが顔を見合わせたとき、光が消えた。
そして、さっきまでよりも、いっそうまぶしい光が。
「わっ」
力いっぱい目をつぶる。
それから、なんとなく、おさまったみたいだ、という気がしてきたので、おそるおそる目を開くと。
「わあ……」
鳥だ。
よろず屋くらいの大きさの鳥が、羽をたたんで立っていた。
真っ白で、ふわふわの羽。
脚は真っ黒で、爪が、真っ黒なのにギラギラと光っていた。
はっとして、顔を見ると、赤い、鋭い目が私たちを見ていた。
なにも言えない。
動けない。
そのとき、鳥が羽ばたいた。
「わっぷっ」
すごい砂ぼこりが吹き上がって、私たちは転んでしまった。
そして、次に目を開けたときには、空の、高いところに白い鳥がいた。
ばさっ、ばさっ、と大きく羽を動かして、どんどん小さくなっていった。
「すごかったね、スライムさん……」
「はい……」
「あ、スライムさん、砂だらけだよ」
「えいむさんもですよ!」
「はは」
「ふふ」
私が地面に書いた図形はすっかり消えていた。




