149 スライムさんと完全犯罪
「えいむさんは、かんぜんはんざい、ってしってますか?」
今日も私はよろず屋で、スライムさんと薬草を食べていた。
売り物にするにはあまりきれいな形ではないものを、積極的に食べている。
「完全犯罪? 完全な犯罪ってこと?」
「そうです」
「知らない」
「そうですか。ぼくは、それをやろうとおもっているんですが」
「スライムさんが犯罪者になるの?」
「はんざいというのは、ひとによって、ちがうものです……」
スライムさんは言った。
「でも、スライムさんが犯罪者になるのは、ちょっと……」
「かんぜんは、かんぜんなので、だれがやったかも、どうやったかも、わかりません! だから、じっしつ、はんざいしゃでは、ありません!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「そうなの? でも、やるんでしょ?」
「わからなければ、はんざいでは、ないのです……。たとえば、こうです」
「え?」
「ぼくは、えいむさんが、さっきかったやくそうを、かってに、てさげから、とりだしました」
「ええ?」
「でもえいむさんがみていないうちに、こっそり、もどしました。だから、かんぜんはんざいです!」
「なるほど……?」
私は首をかしげた。
「スライムさんは、こっそり泥棒になったけど、こっそりもどしたから、わからないと」
「そうです!」
「でも、私はもう聞いちゃったよ。完全犯罪じゃ、なくなっちゃったんじゃない?」
「!! もうてん!!」
スライムさんは、カウンターの上でぴたりと止まった。
「スライムさんが、完全犯罪のことを私に言おうとすると、完全犯罪じゃなくなっちゃうから……」
「ぼくは、えいむさんに、かんぜんはんざいを、じまん、できない……?」
「そうだね」
「ああ、ぼくは、なんのためにかんぜんはんざいを!?」
「私に言うために完全犯罪してるの?」
「そうですよ!!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「そう……。じゃあ、だめだね」
「かんぜんはんざいは、やめます」
「そうするといいよ。スライムさんが犯罪者っていうのは、やっぱり嫌だもん」
「そうですか?」
「うん」
「じゃあ、やめます!」
「そうするといいよ」
私はうなずいて、ちょっと考えた。
「……ところで、私は、完全犯罪を、したと思う?」
「なんのはなしですか?」
「もう、私の手による完全犯罪が、スライムさんに対して行われていたとしたら……?」
「えいむさんが、かんぜんはんざいを!」
スライムさんが小刻みに左右に動いた。
「あ! でも、そのはなしをしたら、かんぜんはんざいじゃ、ないですよ!」
「じゃあ、私は完全犯罪してなかったのかもね」
「? してなかったんですか?」
「かもね」
「どっちですか?」
「したかもしれないし、してないかもしれないし」
「えいむさん、ずるいですよ! はっきりしてください!」
「でも、言ったら完全犯罪じゃなくなっちゃうんでしょ」
「! じゃあ、やったんですね!?」
「やってないかも」
「えいむさん!」
「どっちだったかなあ」
「えいむさん!!」
スライムさんが、カウンターからとびあがって、体当たりしてきた。
「わあ!」
「うおー!」
スライムさんがぽーん、とはねかえっていった。
「これは、犯罪だよ!」
「はんざいですか?」
「体当たり罪!」
「わかりました!」




