147 スライム神様
よろず屋に入る前、声が聞こえた。
「えいむさん……」
「え?」
スライムさんの声だ。
「スライムさん?」
「ここです……」
「あ」
見上げると、よろず屋の屋根の上にスライムさんがいた。
おだやかに、微笑んでいる。
「そんなところでなにしてるの?」
「ぼくは、かみです……」
「え?」
「かみさまです……」
「スライムさんが神様になったの?」
「そうです……」
よくわからない。
「神様って、どういうこと?」
「かみさまは、じこしんこくせいです……。なろうとおもえば、なれるのです……」
「そうなの?」
「はい……」
「でも、どうして自己申告したの?」
「かみは、ひとをしあわせにします……。だから、ぼくは、えいむさんをしあわせにするのです……」
「それは助かるけど。神様って、そういうものなの?」
「かみさまには、いろいろあります……」
「スライム神様は?」
「あさ、いいことがありますように、といってください」
「うん」
「よる、いいことをおもいだしてください」
「うん」
「それでおわりです……」
「それだけ?」
「すらいむかみさまは、おてがるなのです……」
「それは助かるね」
「かみさまは、いろいろありますが、おてがるなかみさまがいないので、ぼくが、なります……」
「お手軽な神様」
「えいむさんは、ぼくをしんじますか……?」
「えっと……?」
「しんじたくないですか……?」
私は、神様についてすこし考えた。
「わたし、かみさまとかよくわからないけど、いいの?」
「はい、ぼくも、よくわからないので……!」
「スライムさんは知らないといけないんじゃないの?」
「かみさまは、かみさまにくわしいんですか……?」
おだやかな微笑みが、すこし心配そうになった。
そう言われると、どうなんだろう。
神様に詳しい人は神様に詳しいかもしれないけど、神様自身は……?
「神様はなんでも知ってるって聞いたことあるけど」
「うっ……」
「でも、自己申告制なら、審査もないんだろうし、いいんじゃない?」
「よかった……」
「でも、スライムさんが神様になったら、よろず屋はどうするの?」
「かみさまは、ずっとかみさま、なんですか……?」
「え? そうじゃないの?」
「じゃあぼくは、めずらしいかみさまになります。かみさまと、かみさまじゃないものを、いったりきたりする、かみさまになります……」
それも、自己申告制だし、いいんだろうか。
「……えいむさんも、かみさまになりますか……?」
「私が?」
「じこしんこくせいなので……」
私は、神様について考えた。
「えっと、神様になる場合、どうしたらいいのかな」
「どうにでもして、いいのです……」
「そっか。じゃあ……」
私は、神様について考えた。
「じゃあ、私は、こんにちは、って言ったらしあわせになる神様、にしようかな」
「それは……?」
「こんにちは、スライムさん」
「こんにちは……?」
「これで、私とスライムさんは今日いちにちしあわせ」
「!! ……そんな……!? ひびの、あいさつで……!?」
「お手軽でしょう」
「あたらしく、やることがふえない……? おてがるの、きわみ……!?」
「ところで、今日はお店の中入っていいの?」
「あ、いいですよ!」
スライムさんは、ぴょん、と屋根からおりてきた。
「いまのスライムさんは?」
「ふつうすらいむです!」
「すごいんじゃないの?」
「あ、すごいすらいむです!」
「忘れちゃだめだよ」
「しっぱいしました」
「ちなみに、私はまだ神様だよ」
「おお! きづきませんでした!」
「ふふ。神様である」
「じゃあ、ぼくも、かみです……」
「神様対決だね」
「かみ……」
スライムさんがおだやかな笑顔になったので、私もまねしてみた。




