143 スライムさんは商品
「こんにちは」
よろず屋に入ると、誰もいない。
「いらっしゃませ!」
と思ったら返事が。
でも、いつものようにカウンターの上に現れるわけでもなく、ぴょんぴょんと横に現れるわけでもない。
「スライムさん?」
「エイムさん、こっちですよ! こっち!」
「あ」
スライムさんは、カウンターの中にいた。
せまい段の中にいるので、ちょっとつぶれたみたいになっている。
「スライムさん、どうしたの?」
「しょうひんのきもちに、なってみようとおもいました!」
「商品の気持ち?」
「はい! いつも、いつも、このなかにいて、ただただうられていくのをまつ、しょうひんたち。そのきもちをりかいすることで、ぼくは、あらたなるじぶんにであえるのではないか……。そうおもいました!」
「そっか。どう?」
「せまいですけど、いがいとおちつきます!」
私はスライムさんを見た。
「スライムさんは、商品なんだよね?」
「そうです!」
「じゃあ、買ってもいいの?」
「ぼくをかうんですか!?」
スライムさんは、ぴょん、と飛ぼうとしたのか、真上の板にぐにょん、と体を押しつけた。
「買ってもいいの?」
「いいですけど、なににつかうんですか? まくらですか?」
「枕には使わないけど……。ふっふっふ。あんな使い方をしたら、スライムさん、どう思うかなあ……」
「なににつかうきですか! あつあつのおなべを、おく、だいにつかうきですか!」
私は、ぐつぐつ煮えている鍋を上にのせられたスライムさんが、じゅー、と水蒸気を上げながら平べったくなっていくのを想像した。
「そうしようかなあ。ちがう使い方にしようかなあ」
「あっ! いすのうえにおいて、そこにすわって、ふかふかしようとおもってるんですね!」
私は、スライムさんに座って、ちょっと体を弾ませるようにするのを想像した。
「そうしようかなあ。ちがう使い方にしようかなあ」
「もしかして、しょくじちゅうに、ちょっと、ふぉーくをおくところにつかう……?」
「ねえ、どうして置くところばっかりなの? そこ、せまくてきついんじゃないの? だいじょうぶ?」
「だったら……」
スライムさんが、ふむむ、と考える。
「じゃなくて、私、スライムさんを買ったりしないから」
「!! ぼくには、かちが、ない……!?」
スライムさんが、すこし、てろりと平べったくなった。
「価値はあるよ」
「でも、かわないって……」
「私は、スライムさんと、遊んだりするんだから、買うとか、買わないとか、そういうことじゃないでしょ?」
「!! なるほど!」
スライムさんは、大きく目を開いた。
「ふふふ」
スライムさんは笑った。
「ふふふ」
私も笑った。
「そういうの、なんて言う?」
「せつやく、ですね!」
「仲良しだよ!」




