142 スライムさんのゆうれい
よろず屋に入って、あいさつをしようとしたら。
「あれ、スライムさんどうしたの」
スライムさんは、カウンターの前でふわふわ浮かんでいた。
「あ、しんでしまいました」
スライムさんはあっさり言った。
「え? ええ!?」
「びっくりしましたよ!」
「え、本当に? 死んじゃったの?」
「はい!」
スライムさんは元気に言った。
そう言われてみると、いつものスライムさんよりも、青白く光っているようにも見える。
「元気そうだけど」
「しんでも、げんきなんですよね! いがいです!」
「いったい、どうしてそんなことに……」
「かたづけをしようとしたら、くずれてきて、したじきになりました!」
「えっ」
「あれです」
スライムさんが向いた方向、ちょっと奥のほうで、物がくずれているところがあった。
なんだか重そうなものがいくつも見える。
「あれの下敷きになったの?」
「はい! ざんねんながら!」
「そっか。……え、スライムさんがゆうれいになったっていうことは、あの下に、まだ、スライムさんの体があるっていうこと?」
「ちょっとえいむさん! こわいこと、いわないでくださいよ!」
スライムさんが、ぶるぶるっ、とふるえた。
「こわいのは私だよ!」
「かも、しれませんね?」
「見てみたほうがいいよね」
「どうしてですか?」
「だって。スライムさんが、死んじゃったままじゃ、かわいそうでしょ」
「しんじゃったら、なにもかんじないのに。えいむさんは、やさしいんですね」
スライムさんが、しみじみと言った。
なにがなんだかわからない。
「じゃあ、見てみるね」
よいしょ、とくずれたものを持ち上げて、横に置いていく。
金属の、重いものが多い。
「これなに?」
「たてです。とってもかるいでしょう」
「重いよ」
落としてこわしてもいけないから、私はゆっくり、横に移していった。
そして、だんだん感情が追いついてきた。
最初は急に言われてわけがわからず、なにも感じなかったのに、ものが減ってくると、だんだん、つぶれたスライムさんが出てくるかもしれない、そういう気がしてどきどきしてきた。
一番最後の、ふくらんだ布をどかすとき、心臓の音がうるさいくらいだ。
それを持ち上げて……。
「ただの布だ」
ほっとした。
結局、全部どかしたら、床が見えるだけだった。
「ぼくが、いない……?」
「スライムさんはいるけど」
そのときだった。
スライムさんが、ふわり、と浮き上がり始めた。
ふわ、ふわと、天井に近づいていく。
「スライムさん? どうしたの」
「どうやら、おむかえのようですね……」
「えっ?」
「もう、てんに、めされるようです……」
「スライムさん!?」
「えいむさん。おげんきで」
「スライムさん! ちょっと、どういうこと!」
そうしている間にも、スライムさんはふわふわ浮かんでいく。
「ぼくは、えいむさんといっしょで、たのしかったですよ……」
「スライムさん?」
「えいむさんは、どうでしたか……」
「楽しかったけど、スライムさん?」
「それは、よかった……」
「ちょっとスライムさん?」
スライムさんは、天井で止まって、そこでふわふわしていた。
「……てんに、めされませんね……。えいむさん、おてすうですが、そとにだしてもらえますか?」
「スライムさん、それ」
「なんですか?」
「体の下になにかあるよ」
天井に引っかかったスライムさんの下に、青白く光るものがあった。
石みたいだ。それが光っている。
「したですか?」
スライムさんが体をひねると。
「わっ」
急にスライムさんが落ちてきた。
「わっぷ」
スライムさんは私の頭で一回はずんで、床に落ちた。
「えいむさん、だいじょうぶですか!」
「うん、なんとか。ぷよぷよしてたし」
「それはよかったです!」
見上げると、天井に、青白く光るものが、押しつけられるように浮いていた。
ふわふわと、すこしだけ左右に動いている。
「なんだろう」
「なんだか、みたことがありますね」
スライムさんは言った。
「あっ」
「なに?」
「あれは、たてのぶひんです!」
「盾?」
私は、さっきどかした盾を思い出した。
「あれがついていると、とてもかるく、だれにでもつかえるようになるんです! あれが、とれたんですね……」
「そっか。浮かぶ力があるのかもね。それがはずれて、スライムさんの下にいっちゃったんだね」
「なんだ、ぼくはてっきり、しんでしまったものかと」
「早とちりだね」
「どうも、ごしんぱいをおかけしまして……」
「いいよいいよ! ほっとした!」
私はスライムさんを、ぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよぷよした。
「あわわわわ」
「無事でよかったね! スライムさん!」
「わわわわはい! ぼくも、ほっとしました!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
そうしたら壁にかけてあった小さな剣にぶつかった。
ゆれて、着地したスライムさんの真横に落ちた。
「……スライムさん?」
「きをつけます! より、いっそう!」
スライムさんは、きりっ、とした。




