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139 スライムさんとこんぼう

「こんにちは……」

 よろず屋に、そうっと入ったら、壁の近くにいたスライムさんがびくっとした。


「えいむさん!?」

「静かに入ってみました」

「げんきに、はいってください!」

「わかった。こんにちは!」

「いらっしゃいませ!」

「ここ、こんぼうって売ってる?」

「ありますよ!」

 スライムさんは、ぴょん、ととんだ。


 その延長線上に、壁に飾ってあるこんぼうが見えた。


「あった」

 私は、引っかかっていたところから外して、カウンターの上に持っていった。


「よいしょ」

「ずっしりしますよね!」

「ちょっと重かった。おいくらですか?」

「30ごーるどです!」

「はい」


 私は、用意してきたお金を、カウンターに置いた。


「ちょうどです!」

「どうも」

「ふくろは、いりますか?」

「持ってきたからだいじょうぶだよ」


 私は、肩にさげていた袋の口を大きく開いて、中にこんぼうを入れた。


「よいしょ」

「それにしても、えいむさんがやくそういがいをたべるなんて、めずらしいですね!」

「食べないよ!」

「あ、そういうことですか」

「こんぼうは、お父さんのおつかい」

「まものをたおすんですか?」

「ううん。夜、使うんだよ」

「……えいむさん」

「なに?」

「つらいめに、あって、いたんですね……」


 スライムさんは目をふせた。


「え?」

「でもだいじょうぶです! ぼくがたすけてあげます! えいむさんの、おとうさんは、どこかへ、やってあげましょう!」

「なんの話!?」




「なーんだ、えいむさんは、おとうさんにいじめられてなかったんですね!」

「そんなわけないでしょ」

「でも、よる、こんぼうで、なぐられるってきいたら、そうおもいますよ!」

「言ってないよ! 使うって言っただけだよ!」

「じゃあどうするんですか?」

「こんぼうで、体をほぐすんだよ」

「こんぼうで?」

 スライムさんは、目をぱちぱちさせた。


「見て」

 私は、こんぼうをカウンターに出した。


「こんぼうって、ごつごつしてるでしょ?」

 丸っこくふくらんだ木の棒から、枝の子どもみたいなものが、にょきにょき生えているみたいな形をしている。


「はい」

「それを、背中にあてるんだって」

「せなかに?」

「そうすると、座って体を押しつけるだけで、肩とか、背中とか、腰がほぐせて、楽になるんだって」

「そんなつかいかたが! いたくないんですか?」

「とがってるところは、削ったりして、なめらかにするの。いままで使ってたやつがこわれちゃったから」

「ほほーう……」


「さすがえいむさんの、おとうさんですね!」

「そう?」

「こんぼうで、からだをけんこうにするなんて、ふつう、おもいつきませんよ!」

「そう?」

「すごいです! さすがです!」

「そう?」

「すごいです!」

「私もすごい?」

「すごいです!」

 ついでに言ってみたら、私もほめてもらえた。


「じゃあ、ぼくも!」

 スライムさんはカウンターにとび乗ると、体を押しつけた。


「スライムさん?」

 むにむにと押しつけている。


「えい!」

「スライムさん」

「えいえい!」

「スライムさんは、どうなの?」

 スライムさんは、ゆっくりこんぼうから離れた。


「……ぼくはだめでした」

「え?」

「ぜんぜん、けんこうになれそうなきが、しません。だめすらいむです」

「そんなことないよ。私も、お母さんも、あんまりよくわからないし」

「そうなんですか!?」

「うん。お父さんだけだよ」

「こじんさ、ですね!?」

「うん」

「あぶなかった……。あやうく、すごくなくなるところでした」

 スライムさんは、きりっ、とした。

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