138 スライムさんとあぶない服
「あ」
スライムさんは、よろず屋の外で、箱の中をのぞいていた。
近づいていっても全然気づかないみたいだ。
うしろから声をかけたら、びっくりしてとびあがって、中に入ってしまったりするだろうか。
声をかけようか、どうしようか。
びっくりして、ぴょん、と入ったらちょっとおもしろいかもしれない。
なんて悪いことを考えながら近づいていくと、スライムさんのひとりごとが聞こえてきた。
「ふりょうひん、ですかねえ……」
「不良品?」
私がつい言うと、スライムさんがぱっ、と振り返った。
「えいむさん!」
「こんにちは」
「いらっしゃいませ! ふふ、ぼくは、おみせのそとであっても、いらっしゃい、といってしまう、すらいむですよ……!」
「やるね」
「ふふふ」
「ところで、どうしたの?」
「それがですね。とりよせた、しょうひんなんですけど」
箱の中には、ひものようなものが入っていた。
「ひもを買ったの?」
「ぼくは、あぶないふくをかったんです」
「あぶない服? どんな服?」
「くわしくは、わからないんですけど、あぶないふくなので、もっと、とげとげしてたり、ぎらぎらしてたりすると、かくしんしていたのに……」
「ふうん」
中に入っているのは、ひもが何本か、組み合わさったようなものだった。
目に痛いほどの黄色だ。
「あぶないみず……、いや、あぶないふく……。どっちでしたかね」
スライムさんがひとりでぶつぶつ言っていた。
「出してもいい?」
「はい」
取り出してみると、ひもは、三本くらいだ。
それが、たまに組み合わさってひとつになっている部分があって、またわかれて、となっている。
「なんだろうね」
「あぶないふくです!」
スライムさんは言った。
「でも、なにも着てないのとあんまり変わらないと思うんだけど」
「ぼくも、そうおもいます!」
「だいたい、着るっていっても、どうすればいいんだろう」
私は、ひも集まっているものを、首にかけてみた。
てきとうに、ひもの間から手を出したりしてみる。
ひもが体にからみついているだけにしか、見えない。
「ひもがからみついているだけですね」
スライムさんは言った。
「でしょう?」
ひもは、よく見ると、たまにすこし太くなっているというか、幅だけが広くなっているところもある。丸くなっていたり、三角になっていたり。
そういう模様なんだろうか。
「あ」
「なんですか?」
「もしかしてこれ、真っ白い服の上に着たりするのかな」
「どういうことですか?」
「そうすると、服に、柄がつけたしできるでしょう? あとから柄をたせる服、かなって」
「なるほど! そうかもしれませんね! そうです!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「でも、なにがあぶないんだろうね」
「そうですねえ……」
私たちはすこし考えた。
「わかりませんねえ」
「わからないね」
わからなかった。
「とりあえず、もどしておくね」
私は、体にだらりとからみついたひもを持って、首から引き抜こうとした。
「ぎゃっ」
そのとき、首がぎゅっ、としまった。
「だいじょうぶですかえいむさん!」
「う、うん」
一度さげて、ゆっくり抜いたら取れた。
「あぶなかったですね!」
「そうだね!」




