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137 スライムさんとランプの魔人

 よろず屋に向かって歩いていたら、中から白い煙が出てきて、スライムさんの大きな声が聞こえた。


 私は走ってよろず屋に入った。

「スライムさん、どうしたの!」


 店内には、スライムさんと、上半身が大男、下半身が煙の人がいた。

 男の人は浮かんでいて、下半身の煙は、カウンターの上にあるランプとつながっている。


「なにこれ」

「わかりません」

 スライムさんは、私と、男の人を見比べていた。


「わたくしは、ランプの魔人でございます」

「ランプの魔人さん?」

「おっしゃるとおりでございます」

 下半身がもくもくとした煙で、ランプにつながっている人はそう言った。


「わたくしは、どのような願いでも、たったひとつだけ、かなえることができます。どうぞ、なんなりと」

「スライムさん、これ、なんなの」

「らんぷをだしてきたら、このひとがでてきました」

「ランプをこすった方が、ご主人さまでございます」

 ランプの人は言った。


「ええと、つまり、お店の商品なの?」

「はい!」

 スライムさんは元気に言った。


「スライムさん。この人、どんな願いでもかなえてくれるって」

「ひとつだけ、ですよ」

 ランプの人は、片目を閉じて言った。


「えいむさんは、なにかおねがいごと、ありますか?」

「え? 私はいいよ。これはスライムさんのランプだったんだから」

 知らない人に、なにかもらいたいとも思わないし。


「そうですか? えいむさんは、せかいのはんぶんとか、いりませんか?」

「いらないいらない。スライムさんは、ほしいの?」

「ぼくもいりません!」

 スライムさんは、きりっ、と言った。


「どのような願いでも、かなえてみせましょーう!」

 ランプの人は、歌うように言う。


「どうするの?」

「うーん。あ、そうです! ぼく、おもいつきました!」

「なに?」

「まじんさん、いいですか?」

「はい! なんなりと!」

「では」

 スライムさんは、こほん、とした。


「ねがいをひとつ、ふやしてください!」

 スライムさんは言った。


「え? そんなことできるの?」

「……できませんか?」

 スライムさんは不安そうにする。


「……できます!」

 ランプの人はそう言うと、にっこり笑って、ぴかーっ、と光った。


「わっ」

 私たちはまぶしくて目を細める。


「……願いはかなえました!」

 ランプの人は言った。


「願い、かなったって」

「そうですね。でも、よくわかりませんね」

 スライムさんは、なんともいえない顔だった。


「まちがいなく、増えました!」

 ランプの人は言う。


 どうやってたしかめたらいいんだろう。

 あ、そうか。


「スライムさん。もう一回頼んでみたらいいんじゃない?」

「どういうことですか?」

「さっきの願いがかなってたなら、また、ひとつだけ頼めるようになってるはずでしょう? かなってなかったら、もう、願いごとはできないんじゃない?」

「なるほど! では」

 スライムさんは、こほん、とした。


「ねがいをひとつ、ふやしてください!」

「かしこまりました!」

 ランプの人はそう言うと、にっこり笑って、ぴかーっ、と光った。

 私たちはまぶしくて目を細める。


「……願いはかなえました!」

 ランプの人は言った。


「さっきのお願い、かなってたっぽいね!」

「ぽいです!」

 スライムさんは、満足そうだった。

 よかったよかった。

 

「では、願いをひとつだけ、かなえましょう」

 ランプの人は言った。

 そうだ、ひとつ増やし続けたら、永遠に終わらない。


「結局まだ頼んでないよ、スライムさん。なに頼むの?」

「ぼくはもう、まんぞくしたのでだいじょうぶです」

「え?」

「えいむさん、どうぞ」

「私はいいよ。知らない人だし、スライムさんにお金をもらうより嫌だなあ。スライムさん、お願いをたくさん増やして、いろいろ頼めば?」

「ぼくももう、いいんですけど」

「お店のそうじとかは?」

「おみせのことを、じぶんでやらないのなら、もう、よろずやなんて、いみがないですよ!」

 スライムさんは、きりっ、とした。


「おおー。かっこいい!」

「ふっふっふ!」

「じゃあどうしようか」

「ううむ。だったら、ねがいを、へらしてください、ってたのんでみますか?」

 スライムさんが言うと、ランプの人が、ぎょっとしたように私たちを見た。


「どんな願いでもかなえるのですよ? そんなもったいないことを」

「でも、ねえ」

「そうです! ぼくはもう、まんぞくです!」

 スライムさんは、ぴょん、ととんだ。


「そうですか……。わかりました。では、その願いを……! うん……?」

 するとランプの人の顔色が、だんだんくもっていった。


「どうかしたんですか?」

 スライムさんが言うと、びくっ、とした。


「べ、べつに、かなえられないということなんて、ないのですよ!」

「? はい」

 スライムさんは、きょとんとしていた。


「あ、そうか」

 私は思いついた。


「どうかしたんですか、えいむさん」

「たぶんね、願いをへらすお願いって、できないんじゃないかなあ」

 私は言った。


「どういうことですか?」

「私は願いの専門家じゃないからわからないけど。願いをへらすとするでしょ?」

「はい」

「へらす願いをかなえるっていうことは、願いが残ってないとだめだよね?」

「はい」

「でも、かなえる瞬間、ひとつだけの願い、がなくなっちゃうでしょ?」

「はい?」

「えっとね……」


 1を使って、1を減らそうとすると、1を使った瞬間、減らそうとしていたはずの1が0になっている。

 そうしたら、減らせない。

 だから願いがかなえられない。

 そういうことじゃないんだろうか。


「あたまが、こんがらがりそうです」

「私も」

「でも、えいむさんのいうとおり、というきがします!」

「やった」


 私とスライムさんはランプの人を見た。

 ランプの人は、目をそらした。


「つまり、できないんですね?」

 スライムさんは言った。


「いや……、……、……できま……」

「なんでもかなえられるっていったのに、できないんですね?」

「できま………………」

「できるんですか? できないんですか?」

「で、でき…………」

「そうだ。お願いの数を増やしたら、できるんじゃない?」

 2のうちの1を使って、1を減らせば、ちょうど0だ。


「なんでもできるっていったのに、そういうことをしないと、できないんですね?」

 スライムさんが言うと、ランプの人はだまってしまった。


「おねがいのかず、ふやしましょうか? ふやします? できないんですよね? ね?」

 スライムさんが近づいていったら。


「……うわー!! やめてくれー!!」

 ランプの人は、ランプと一緒に浮かんで、外に出ていってしまった。


「あ! まってください! できないんですねー!?」

 スライムさんは、ぴょこぴょこ追いかけていった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 願いを増やすのは考えたことあるけど、減らすのは考えたことなかったなぁ…
[良い点] まさかの展開www
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